ノーベル物理学賞、赤崎・天野・中村氏が受賞


青い輝きに最高の栄誉、赤崎氏が基礎、中村氏実用化

ノーベル物理学賞、赤崎・天野・中村氏が受賞

記者会見で花束を受け取る名城大の赤崎勇教授(右から2人目)=7日夜、名古屋市天白区の同大

ノーベル物理学賞、赤崎・天野・中村氏が受賞

ノーベル物理学賞に決まった(左から)中村修二米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授、赤崎勇名城大教授、天野浩名古屋大教授の3氏

 「20世紀中は不可能」とさえ言われた青い光に、最高の栄誉が贈られる。青色発光ダイオード(LED)の開発で7日、ノーベル物理学賞に選ばれた赤崎勇名城大教授(85)と天野浩名古屋大教授(54)、中村修二米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授(60)。苦労の末に輝いたLEDは、省電力で長寿命。照明やディスプレーなど用途が広がる。画期的発明がもたらした光が、列島を照らした。

 発光ダイオード(LED)は、電子が多いn型半導体と電子が抜けた穴が多いp型半導体を接合させて作り、電子が接合部で穴に落ちる際、エネルギーを光として放出する。米イリノイ大のニック・ホロニアック名誉教授が1962年に米ゼネラル・エレクトリック社で赤色のLEDを開発し、続いて黄緑色や黄色もできた。

 光の波長が短い青色を実現するには、接合部の「落差」が大きく、高いエネルギーを放出させる半導体が必要となる。最初に炭化ケイ素系で青色LEDが開発されたが、暗過ぎたため、セレン化亜鉛系と窒化ガリウム系が候補とされた。

 薄膜の単結晶を作るには、結晶構造が似た物質を基板とし、その上に原料ガスを吹き付けて成長させる。窒化ガリウムは良い基板がなく、p型の作製も困難だったため、70年代後半にはセレン化亜鉛の研究開発が主流となった。

 しかし、赤崎勇氏は窒化ガリウムの方が放出エネルギーが高く、結晶が安定していて優れていると考え、松下電器産業(現パナソニック)に勤務していた73年、開発に着手した。81年からは名古屋大で大学院生の天野浩氏(現同大教授)らと取り組み、85年にサファイア基板上に緩衝層を低温で作ってから窒化ガリウムの結晶を成長させる方法を開発。89年にはこの結晶にマグネシウムを加え、電子線を照射する方法でp型を作り、n型と接合して青色LEDを実現した。

 一方、中村修二氏も88年、日亜化学工業で青色LEDの開発を決意。米フロリダ州立大に1年間留学して「有機金属化学気相成長法(MOCVD)」を習得した。ガスを基板の上と横から吹き付ける「ツーフローMOCVD」装置を開発し、窒化ガリウムの高品質結晶を作製。マグネシウム添加結晶を熱処理してp型も作った。さらに、窒化ガリウムにインジウムを加えた薄膜を発光層とする多重構造の結晶で高輝度の青色LEDを開発し、同社が93年に世界初の製品化を発表した。