農研機構が飛ばないテントウムシを商品化


「黙々と食べ続ける」と太鼓判、害虫を駆除する「農薬」として

500

農業・食品産業技術総合研究機構近畿中国四国農業研究センターが開発した飛ばないテントウムシ(同センターの世古智一氏提供)

 飛ばないテントウムシが開発され、作物の汁を吸うアブラムシを駆除する「農薬」として商品化された。天敵のテントウムシを活用するアイデアは以前からあったが、ビニールハウスの天井などに張り付いて「仕事」をしないのがネックだった。担当者は「黙々と食べ続ける」と飛ばない働き者に太鼓判を押す。

 開発したのは、農業・食品産業技術総合研究機構の近畿中国四国農業研究センター(広島県福山市)。同市内で採取したナミテントウという種の中から飛距離の短い個体を約30世代にわたり選別・繁殖を繰り返したところ、羽根があっても飛ばないタイプが生まれた。屋内限定の生物農薬として登録が認められ、茨城県の企業が6月から販売を始めた。

 羽根を人為的に折ったものも実用化されているものの、子孫は飛ぶことができる。

 ナミテントウは好天時、半数以上が天井や壁に張り付いてしまうが、飛ばないタイプは作物に定着。ナミテントウを放たないケースに比べ、コマツナの被害を10分の1以下に抑えた。

 羽根に異常は見つからず、飛ばない理由は未解明だが、遺伝子組み換えを行っていないため、逃げ出しても生態系を乱す恐れがない。世古智一主任研究員は「農薬の使用を減らす効果が期待できる。露地でも使えるように研究を続けたい」と話している。