川端康成、初恋女性伊藤初代への書簡を発見


「伊豆の踊子」にも影響

川端康成、初恋女性伊藤初代への書簡を発見

記念撮影で一緒に写真に納まる川端康成(左)と伊藤初代(川端康成記念会提供)

川端康成、初恋女性伊藤初代への書簡を発見

川端康成が初恋の相手とされる伊藤初代に向けて書いた書簡(川端康成記念会提供)

 ノーベル賞作家の川端康成(1899~1972年)が、初恋の女性とされる伊藤初代に宛てた未投函(とうかん)の書簡1通が神奈川県鎌倉市の川端邸で見つかり、その内容が8日明らかになった。初代は「篝(かがり)火」「非常」などの初期作品や代表作「伊豆の踊子」の世界観に影響を与えたとされ、川端文学の成立過程を解明する上で重要な資料となりそうだ。

 書簡は1921年秋に書かれ、当時川端22歳、初代15歳。「僕が十月の二十七日に出した手紙見てくれましたか。君から返事がないので毎日毎日心配で心配で、ぢつとして居られない」との書き出しで、「もしかしたら病気ぢやないか、本当に病気ぢやないのかと思ふと夜も眠れない」など、初代への切々とした思いがつづられている。

 2人はこの書簡の約2年前に知り合い、1度は結婚を約束したが、初代が「ある非常」を理由に断り、破局を迎えた。書簡は初代が断りを入れる前後のものとみられ、川端は初代を東京へ迎え入れようと、彼女の住む岐阜に「十日前後に必ず行く」と念を押している。

 今回、初代から川端への書簡10通も発見された。その文面の一部は「非常」などの作品に引用されたことが確認され、川端康成記念会の水原園博理事は「以前から存在が指摘されていたが、10編以上ある初期の名作と関連する第1級の資料」と説明。川端の書簡も「初代に向けて書かれたものは初。作家というより一青年の命懸けの恋が伝わってくる」と語った。

 川端の書簡は16日から、岡山県立美術館(岡山市)で一般公開される。