「ネムリユスリカ」の乾燥幼虫が宇宙で蘇生
ISSで若田光一さんが実施、成虫になったことを確認
国際宇宙ステーション(ISS)に滞在中の若田光一さんが行ったネムリユスリカの実験で、乾燥して休眠状態の幼虫に水を与えて蘇生させたところ、約2週間後にさなぎを経て成虫になった例があった。農業生物資源研究所やロシア科学アカデミー生物医学問題研究所などが15日発表した。
ネムリユスリカはアフリカに生息し、幼虫が乾燥に長期間耐えることで知られる。乾燥が進む間に体内で糖類の「トレハロース」を大量合成し、たんぱく質や細胞膜などを保護してから休眠状態に入ると考えられている。
農業生物研の奥田隆上級研究員は「宇宙のほぼ無重力状態でも乾燥状態から蘇生し、成虫まで成長できることが分かった。遺伝子の働きを調べる実験も行ったので、今後解析して無重力に対する反応を明らかにしたい」と話している。
実験容器は手のひらサイズで、宇宙航空研究開発機構が開発。容器2個に乾燥した幼虫を50匹ずつ、計100匹入れてロシア宇宙船でISSに運び、若田さんが2月19日に注水してビデオ撮影した。約23度と最適温度より若干低かったが、3時間後にほとんど蘇生。若田さんが3月6日に再び撮影し、6匹がさなぎに、1匹が成虫になっていることを確認した。
ロシアは乾燥した幼虫をISSの船外に1年間さらす実験も行い、宇宙放射線に耐えて蘇生することを確認している。奥田上級研究員によると、乾燥や放射線により発生する有害な活性酸素から体を守る仕組みがあるという。