菅義偉前首相が沖縄を訪問、求心力回復へ着々


振興策の成果をアピール、「選挙イヤー」てこ入れを図る

菅義偉前首相が沖縄を訪問、求心力回復へ着々

那覇空港新滑走路の運用開始2周年式典であいさつする自民党の菅義偉前首相=26日、那覇市

 自民党の菅義偉前首相が、昨年10月の退陣から約半年を経て、活動を本格化させつつある。26日には沖縄県を訪問し、旗振り役を務めた振興策の成果をアピール。夏の参院選や9月の知事選に向け、てこ入れを図った。新型コロナウイルス対応で説明不足などと批判を浴びた首相在任中のマイナスイメージを一掃し、求心力の回復を図る思惑がありそうだ。

 菅氏は、那覇空港(那覇市)で開かれた新滑走路の運用開始2周年式典に出席し「官房長官、首相として沖縄問題に全力で取り組んできた」と強調。新型コロナワクチンや治療薬などの備えも進んでいるとした上で「間違いなく沖縄の観光産業はV字回復する。私もしっかり沖縄の発展を支援する」と訴えた。

 沖縄は今年、重要選挙が続く「選挙イヤー」。沖縄政策は菅氏が最も力を注ぐ分野の一つで、「誰も寄せ付けない天領」(政府関係者)だ。新滑走路も官房長官時代に工期短縮を実現させた案件。政府・与党の実績を誇示することにより、今後の選挙戦を有利に進める狙いがある。

 初戦となった1月の名護市長選では、秘書を現地に常駐させるなど現職再選に奔走。米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設の是非が争点となった激戦を制することに貢献した。

 今回の訪問でも、参院選や知事選をにらみ、県内の企業・団体関係者と相次ぎ面会。自らの関与で勝利につなげ、存在感を印象付けたい考えだ。

 菅氏は首相辞任後、一部で引退説まで取り沙汰されたが、新型コロナワクチンの接種加速など、在任中の実績が再評価されて意欲を取り戻した。今後立ち上げる意向の勉強会は、将来的な「菅グループ」結成の布石との観測が絶えない。

 ただ、党内には岸田文雄首相と距離を置く「非主流派」の動きと警戒する向きもある。菅氏はロシアのウクライナ侵攻を踏まえ、月内の初開催は見送った。参加者が広がりを欠けば遠心力となりかねず、慎重にタイミングを見極める構えだ。