理想を追い執念の逆転、春場所は若隆景が初優勝


新関脇では双葉山以来86年ぶり、下からの攻めで大躍進

理想を追い執念の逆転、春場所は若隆景が初優勝

大相撲春場所で初優勝を果たし、八角理事長(右)から内閣総理大臣杯を受ける若隆景=27日、エディオンアリーナ大阪(代表撮影)

理想を追い執念の逆転、春場所は若隆景が初優勝

優勝決定戦で、若隆景(左)は高安を上手出し投げで下す=27日、エディオンアリーナ大阪

 元大関の気迫に追い込まれた土俵際。若隆景は俵伝いに必死に回り込むと、右で上手を引き、出し投げを打った。初の賜杯を抱いても、表情を緩めなかった27歳。土壇場で踏ん張れた理由を聞かれ、「家族も見に来ていたので、いい姿を見せたい思いがあった」。少しだけ安堵(あんど)の表情を浮かべた。

 目の前で高安が3敗目を喫し、臨んだ本割は正代に敗れた。優勝決定戦を待つ支度部屋では、「次の一番をとにかく頑張ろう」。立ち合いでかち上げられて守勢に回った中、あてがったり、いなしたりして応戦。最後の逆転につなげた。

 新関脇で迎えた今場所は厳しく当たって、おっつけながら前に出る「下からの攻め」で大躍進。「思い描いた自分の相撲にだいぶ近づいた」。そう言い切れるまで、手応えを深めていた。

 軽量ゆえに食い下がる形を磨いたこともあったが、地力を付けるとともに、相撲を始めた小学生の頃の原点を追い求めた。少年時代に元幕下力士の父から言われ続けた「小さい力士はとにかく稽古をやらなきゃ終わり」という言葉は、元小結若葉山の祖父から受け継がれた教えだ。

 12勝を挙げ、大関とりの足掛かりをつくった。もう一つ上の番付へ、「しっかり稽古したい」と即答。優勝の余韻に浸ることなく、視線は早くも次の目標に向いていた。

 若隆景 一生懸命、相撲を取ろうと思った。自分が土俵でできることを精いっぱいやって、(地元の福島に)いい姿を届けたい。


幕内優勝力士略歴 若 隆 景

 東関脇 本名大波渥、福島県出身、荒汐部屋。東洋大出身。三段目100枚目格付け出しで17年春場所初土俵。18年夏場所新十両、19年九州場所新入幕。21年名古屋場所で新小結に昇進し、今場所新関脇。三賞は技能賞3回。祖父は元小結の若葉山で、幕下の若隆元、幕内の若元春は兄。181センチ、130キロ。27歳。得意は右四つ、寄り。