ウクライナの首都周辺で一進一退の攻防が続く
空爆の劇場で300人死亡か、ロシア軍の無差別砲撃がやまず
ロシアが侵攻したウクライナでは25日も首都キエフ周辺や各都市で一進一退の攻防が続いた。南東部マリウポリの市当局は25日、ロシア軍が今月16日に爆撃したとされる市内の劇場で、約300人が死亡したとみられると主張した。目撃者情報として交流サイト(SNS)で明らかにした。
包囲しているロシア軍がマリウポリ市内の一部を制圧し、市長が市外へ退避したとの情報もある。ロイター通信によると、中部ドニプロでは24日夜、郊外の軍関連施設にロシア軍がミサイル2発を撃ち込んだ。北東部ハリコフでは25日、人道支援を行っていた診療所が砲撃され4人が死亡した。
英国防省は25日付の戦況報告で「ウクライナ側の反撃でキエフ東方35キロまで幾つかの町を奪還した」と分析。キエフ北西でも、ロシア軍を押し戻そうと攻勢を掛ける可能性があると予測した。ウクライナのゼレンスキー大統領は25日未明に公表した動画で「勝利が近づいている」と戦果を強調した。
ウクライナのメディアは25日、ウクライナ軍が24日、南東部ベルジャンスクで、ロシアの大型揚陸艦「サラトフ」を撃沈したと伝えた。事実ならウクライナ軍にとって大きな戦果となるが、ロシア側は認めていない。
ロシア軍は地上部隊の進軍停滞で長距離での砲撃や空爆への依存を強めている。ただ、ロイター通信は、米当局者の話として、ロシア軍がウクライナで使う精密誘導ミサイルの失敗率が一部で最大60%に上っていると報道。戦力で劣るウクライナに対し、苦戦を強いられている一因と指摘している。
インタファクス通信によれば、ロシア国防省は25日、自軍の戦死者が1351人に上ったと発表。ただ、米メディアは北大西洋条約機構(NATO)の推計として、ロシア軍の7000~1万5000人が戦死したとみられると報じている。
一方、ロシアが併合したクリミア半島と親ロシア派が実効支配する東部ドンバス地方の間に位置する要衝マリウポリでは、ロシア軍が水や電気など基幹インフラの破壊を進め、徐々に掌握地域を広げているとみられる。ウクライナ国防省は25日、ロシア軍がクリミアとドンバスを結ぶ「陸の回廊」を部分的に確保したことを認めた。
ウクライナ検察当局は25日、ロシア侵攻後に死亡した子供は135人、負傷者も184人に上ると主張した。国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)によれば、24日までに確認された民間人死者は子供118人を含む1035人で、負傷者は1650人。実際の人数ははるかに上回る可能性がある。(ワルシャワ時事)