尹錫悦氏、大統領府の主要機能を国防省庁舎へ


公約履行への意志をアピール、文政権との調整は難航か

尹錫悦氏、大統領府を国防省庁舎に移転へ

20日、ソウルで開いた記者会見で大統領府移転計画について説明する韓国の尹錫悦次期大統領(AFP時事)

 韓国の尹錫悦次期大統領は20日、記者会見し、執務室など大統領府の主要機能をソウル市竜山区の国防省庁舎に移すと発表した。5月10日の政権発足前に準備を完了し、現在の大統領府(青瓦台)は発足時に国民に公開する。

 尹氏は1月、大統領府の移転を公約した。移転は文在寅氏をはじめ歴代大統領も模索したが断念した課題。尹氏は会見で、青瓦台を「帝王的な権力の象徴」と指摘し、「単純な空間の移動ではない。きちんと仕事をするための覚悟と国民との約束を実践する意志をくみ取ってもらいたい」と強調した。

 計画では、国防省や軍合同参謀本部の移転も必要になる。北朝鮮のミサイル発射が相次ぐ中で安全保障上の問題が指摘され、拙速を避けるべきだという声も出ていた。それでも尹氏は、公約履行に向けた意志と実行力をアピールして歴代政権との違いを印象付け、発足直後の政権運営に弾みをつけることを重視したもようだ。

 公約では、市民が自由に行き交うソウル中心部・光化門を移転先に挙げていた。尹氏はこの点に関し、光化門は警護上の問題で市民に深刻な不便を与える上、青瓦台の一部使用継続が不可避だと指摘。国防省庁舎は市民と隔絶した位置にあるが、そうした問題が「ほとんどない」と説明した。国防省庁舎に隣接する返還予定の米軍基地の跡地に、公園を造成して国民と交流できる空間にするという。

 移転には496億ウォン(約49億円)の予備費を充当する計画。文政権の協力が必要となるため、調整が難航する可能性もある。(ソウル時事)