ウクライナのビタリー・キム知事がSNSの星に


毎日動画を投稿、「前向きな」メッセージで住民を鼓舞

ウクライナのビタリー・キム知事がSNSの星に

ウクライナ南部ミコライウ州のビタリー・キム知事(本人のフェイスブックより)

 ロシア軍の攻撃が激しいウクライナ南部に「最もポジティブな役人」(米メディア)がいる。ミコライウ州のビタリー・キム知事(40)。インターネット交流サイト(SNS)で動画公開を毎日欠かさず、苦境の住民を明るい声で鼓舞している。

 「ウクライナからおはよう(こんばんは)」が動画の決まり文句。食事を取りながら戦況を報告したり、ロシア兵に「帰りの交通費や食事は出すから」と投降を訴えたり。ウクライナ側が接収したロシア軍の車両を披露して「マイカーが手に入った。これからが楽しみだ」と自慢する場面もある。

 旧ソ連圏で「高麗(こうらい)人」と呼ばれる極東ルーツのアジア系。ミコライウ州出身で民間企業や中央省庁でキャリアを積み、ゼレンスキー大統領が当選した2019年の選挙を地元で支えた。与党「国民の奉仕者」に所属し、20年に知事に任命された。

 ロシア軍の侵攻後に動画で注目され、米メディアは「SNSのスター」と報じた。ゼレンスキー氏は今月6日、コサックの英雄の名を冠した「ボフダン・フメリニツキー勲章」の授与を決定。キム氏は動画で驚きを隠さず「身の引き締まる思い。勲章に恥じないようにしたい」と心境を述べた。

 黒海に面したミコライウ州は、ロシア軍が北部のチェルノブイリ原発、南東部のザポロジエ原発に続いて3番目に制圧をもくろむ南ウクライナ原発を擁する。海軍の拠点があるオデッサ州の東隣に位置し、ウクライナ軍の必死の抵抗が続いている。(時事)