龍谷大平安、選抜高校野球で悲願の初優勝


伝統校のエースは俺だ、中田の9球が歴史の1ページ

龍谷大平安、選抜高校野球で悲願の初優勝

優勝を決め、喜ぶ龍谷大平安ナイン=2日、甲子園

龍谷大平安、選抜高校野球で悲願の初優勝

8回裏1死満塁から登板してピンチをしのぎ、雄たけびを上げる龍谷大平安の中田=2日、甲子園

 2点リードの八回1死満塁で救援。絶体絶命の場面を切り抜けた龍谷大平安の中田は、何事もなかったかのようにベンチに引き揚げた。紫紺の優勝旗をぐいとたぐり寄せた瞬間。表情はクールそのものだった。

 先行逃げ切りの流れが八回、雲行きが怪しくなる。好投した元氏を継いだ3番手犬塚の腕がすくみ、永谷に2ボールを与えて中田の出番となった。「こういう場面の方が、集中力が上がる」。1球目が外れ、ストライクを投げるしかない。ここからが冷静だった。

 連続で見逃しストライクを取り、外へ逃げるスライダーで空振り三振。続く1番辻にも丁寧にコーナーを突き、5球目を詰まらせて投ゴロに打ち取った。中田の9球を見届けたアルプス席から、割れんばかりの大歓声が上がった。

 背番号1を付ける中田は、準々決勝の桐生第一戦に救援後、肩に違和感を覚えていた。大一番の起用は九回だけの予定だったが、原田監督は一番の勝負どころで切り札をマウンドに立たせた。九回は声をかけてベンチから送り出す。「お前に任せた」

 最後の打者を中飛に仕留めると、中田は両手を高々と突き上げ、喜びを爆発させた。「僕は伝統校の背番号1。エースがしっかりしなければ」。胸を張って言えた。

 創部100年を優に超え、夏は優勝3度。「平安」の校名で果たせなかった春の悲願は、劇的な試合でかなえられた。歴史の新たな一ページ。中田の名もくっきりと刻まれた。