福島の中間貯蔵施設、除染土の搬入が完了へ
環境省、工事などで再生利用を本格化、丁寧な情報発信を
東京電力福島第1原発事故に伴う除染で取り除いた土の中間貯蔵施設(福島県大熊町、双葉町)への搬入が3月末までにおおむね完了する見込みだ。除染土は2045年までに福島県外の最終処分場に移すことが法律で定められているが、受け入れ先は決まっていない。量が膨大なため、環境省は各地の公共工事などで再生利用して減らす方針。担当幹部は「一つの区切りを迎える。今後は再生利用への理解を醸成し、本格的に取り組んでいきたい」と語る。
中間貯蔵施設は原発の周囲を囲む形で、東京都渋谷区と同じ約1600ヘクタールの土地に整備。福島県内の除染で出た土を、各地の仮置き場で一時的に保管した後、15年から同施設へ運んでいる。搬入する除染土の量は約1400万立方メートルと、東京ドーム約11杯分に相当する。
国に土地を売却するなどして、施設の用地確保に協力した住民ら地権者は1800人以上。大熊町の吉田淳町長は「(地権者の中には)同級生や、結婚の仲人をしてくれた人、役場の職員など知り合いがたくさんいる。復興のため仕方なく土地を提供してくれた」と振り返る。
環境省は、処分量を減らすため、放射性物質の濃度が比較的低い除染土について、公共工事や農地のかさ上げなどで再生利用する方針。除染土全体の4分の3を再生利用に回す考えだ。
すでに飯舘村の長泥地区では、除染土で盛り土した農地で花や野菜などを栽培する実証事業が進む。一方、二本松市と南相馬市では道路工事に活用する事業が住民らの反対で中止に追い込まれており、今後の計画も難航する可能性がある。
同省は21年5月から、再生利用に対する理解を広げるため、一般の参加者と議論する「対話フォーラム」を東京と名古屋で開催。今年3月には福岡で予定している。双葉町の伊沢史朗町長は、福島第1原発でつくった電力は首都圏に送られていた点を強調し、「恩恵を受けていた人たちにそのことを理解してもらわないと、(再生利用は)進まない」と訴える。
東京大大学院情報学環の開沼博准教授(社会学)は、除染土の問題に関し「福島から遠い地域の住民には共感しにくい。きちんと伝わっているかを検証しながら進めるべきだ」と、国に丁寧な情報発信を求めた。