「デジタル人民元」、北京五輪でアピール
中国人民銀行が試用版アプリを配信、新型コロナ禍が影
中国は北京冬季五輪の会場で、デジタル通貨「デジタル人民元」の技術力や利便性のアピールに努めた。人民元の将来の国際化も視野に、デジタル元の実力を外国人に体感してもらう絶好の機会だったが、新型コロナウイルス禍で厳しい入国制限が取られたことが足かせとなり、必ずしも当局の思惑通りにはいかなかったもようだ。
五輪開幕を控えた先月4日、中国人民銀行(中央銀行)は、デジタル元をスマートフォンで管理するウォレット(財布)の試用版アプリの配信を開始した。上海市など国内10地域のほか、五輪会場となった北京市と河北省張家口市でも使えるようにした。外国人も携帯電話番号があれば開設可能で、1回当たり最高2000元(約3万6000円)、1日5000元までの決済が行える。
中国は2014年にはデジタル元の研究に着手。20年秋からは実際の利用を想定した大規模な実証実験を各地で実施し、主要国・地域で初となるデジタル通貨の導入を目指してきた。北京五輪は、その成果を対外的にアピールする場となるはずだった。
しかし、現実には北京五輪では新型コロナの流入防止が優先され、外国人の入国は選手やコーチ、報道陣らに限定。会場ではアプリに加え、カード型やリストバンド型の決済端末まで用意されたものの、五輪関係者の関心は高くなかったようだ。
ロイター通信によると、スノーボードなどの競技が行われた張家口の会場内のコーヒーショップでは30分間のうち、外国人は全員が現金かクレジットカードでの支払いを選択。デジタル元のアプリを利用したのは中国人だけだったという。一方、デジタル元は地元でも盛り上がりに乏しく、ボランティアで参加した中国人の女子大学生は「デジタル元のことは知っていたが、会場に来るまで使うつもりはなかった」と語った。
中国はスマホを利用した民間の決済サービスが既に普及しており、デジタル元を使う優先度は低い。利用できる店舗も多くないなど、導入に向けた課題も浮き彫りになった。(北京時事)