コロナ禍こそ、じわりとくるラブストーリー


「ちょっと思い出しただけ」、主演は伊藤沙莉と池松壮亮

コロナ禍こそ、じわりとくるラブストーリー

タクシードライバーの葉を演じた伊藤沙莉(左)と元ダンサーで今は舞台照明スタッフの照生を演じた池松壮亮 ©2022『ちょっと思い出しただけ』製作委員会

 2021年7月26日、34回目の誕生日を迎えた佐伯照生(池松壮亮)は、朝起きていつものようにサボテンに水をやり、ラジオから流れる音楽に体を動かす。けがでダンサーとしての道を断たれた照生は、今はステージの照明スタッフとして働いている。この日も仕事でダンサーに照明を当てている。

 一方、タクシー運転手の野原葉(伊藤沙莉)は、ミュージシャンの男を乗せてコロナ禍の東京の街を走らせる。途中、トイレに行きたいという男を降ろすと、どこからか聞こえてくる足音に吸い込まれてるように歩いていくと、その先には、ステージで踊る照生の姿があった。かつて二人は恋人同士だった。

 時は1年ごとにさかのぼっていく。二人が喧嘩(けんか)した日、冗談を言い合った日、出会った日、愛し合った日……。二人が紡いだ日々が描かれていく。

 撮影は2021年7月20日から8月5日まで2週間という短期間で撮影した映画「ちょっと思い出しただけ」。設定が2021年から始まるだけに冒頭はまさにコロナ禍の撮影だったということを改めて思わされる。

 池松壮亮と伊藤沙莉のテンポのいい掛け合いには思わず笑ってしまう。

 コロナ禍だからこそ、じわりとくるラブストーリーだ。

 ロックバンド「クリープハイプ」の尾崎世界観が自身のオールタイムベストに挙げるジム・ジャームッシュ監督の映画作品をモチーフにした曲「ナイトオンザプラネット」に着想を得て、松居大悟監督が書き上げたオリジナル作品。

 主題歌には着想の基になった『ナイトオンザプラネット』が使われている。ミュージシャンの男役として尾崎世界観も出演している。

 主演の池松壮亮、伊藤沙莉のほか、成田凌、市川実和子、永瀬正敏などが出演している。現在公開中。

 (佐野富成)