デジタル上の漫画やアート、一点物に


デジタル資産「NFT」取引活況、コンテンツ産業成長へ

デジタル上の漫画やアート、一点物に

「Kollektion(コレクション)」のサイトで販売された漫画ページのNFT(運営会社KLKTN提供)

 デジタル資産「NFT(非代替性トークン)」の取引が活況を呈している。対象はデジタル上の芸術や音楽作品、アイドルのカードなど多岐にわたり、購入者には一点物の価値を持つ。NFT市場はファンとアーティストの新たな関係づくりの手段として注目されている。

 NFTは暗号資産(仮想通貨)の基盤技術を活用することで、偽造や複製を困難にし、デジタル上の作品を本物と証明する「鑑定書」の役割を担う。

 NFTの取引プラットフォーム「Kollektion(コレクション)」は昨年末、講談社が発行する漫画誌「ヤングマガジン」と連携し、新連載の各ページを数量限定のNFTとして売り出した。第1弾は12時間で完売。購入者はお気に入りの作家を応援し、限定プレゼントなどの特典を受けられる。

 共同創業者の岩瀬大輔最高経営責任者(CEO)は「所有からシェア(共有)になったと言われるが、もう一度デジタル資産の所有の時代に戻るかもしれない」と語る。今年春には利用者同士がNFTを売買できる機能を導入する計画だ。原作者は転売からも対価を得ることができ、作家らの新たな収益源に育つ可能性がある。

 NFTは昨年来、デジタルアートの競売などに利用され、取引が過熱している。昨年3月には、NFTアートの競売で約6930万ドル(当時のレートで約75億円)の値が付き、話題になった。

 ただ、株式などと異なり、NFTの取引をめぐるルールや法律は整備されておらず、所有者の権利やトラブル時の責任の所在などは不透明だ。自民党はプロジェクトチームをつくり、政策提言の検討に乗り出した。

 若宮健嗣クールジャパン戦略担当相は今月4日の衆院内閣委員会で、「わが国の豊富なコンテンツがNFTを活用しつつ広く世界の人々に親しまれることを期待している」と語った。日本が得意とするアニメなどのコンテンツ産業の成長戦略につながりそうだ。

 NFT 暗号資産(仮想通貨)の基盤技術となるブロックチェーン(分散型台帳)で取引履歴が記録され、唯一無二の存在と証明されたデジタル資産。デジタルアート作品の売買などで活用されているほか、オンライン上の仮想空間「メタバース」での経済取引とも親和性が高い。代替ができないトークン(Non-Fungible Token)の略語。