22年春闘の賃上げ要求、前年超えが相次ぐ


「物価高を念頭に成果を」自動車労組が提出、交渉が本格化

22年春闘の賃上げ要求、前年超えが相次ぐ

2022年春闘について記者会見する全トヨタ労働組合連合会の吉清一博事務局長=16日午後、愛知県豊田市

 自動車大手の労働組合は16日、2022年春闘の要求書を経営側に提出した。新型コロナウイルス感染拡大によって落ち込んだ業績が回復傾向にあることを踏まえ、賃上げの要求額は前年超えが相次いだ。来月16日の集中回答日に向けた労使交渉が本格化した。

 最近はガソリンや食料品の値上がりなど物価上昇で家計の負担が重くなっている。自動車総連の金子晃浩会長は16日のオンライン記者会見で「物価が上がるのに賃金が上がらなくて良いのかという危機感がある」と指摘。「そうした観点を念頭に置いた成果を求めたい」と強調した。経営側からも「物価上昇も一つのファクターとして、組合と話し合う」(トヨタ自動車の桑田正規執行役員)との声が出ている。

 トヨタ自動車労働組合は、従来の全組合員平均の要求金額を今年から示さず、職種や職位別に細分化。基本給を底上げするベースアップ(ベア)相当分の有無も明らかにしない。条件をそろえると、前年と同等の賃上げ要求になるという。一時金は前年要求を上回る年間6・9カ月分(前年実績6・0カ月)とした。

 日産自動車の労組は前年要求より1000円高い月8000円の賃上げを求め、ホンダとマツダ、三菱自動車の各労組は、前年に見送ったベア要求を復活させた。

 一方、自動車大手は半導体不足とコロナ禍による減産や、原材料価格の高騰など業績への懸念がくすぶる。労組側も「足元で厳しさが残っているのは否めない」(金子氏)と認める。春闘相場のリード役とされる自動車業界で大幅賃上げのムードが醸成されるかは見通せない。

 電機業界では、東芝、NECが16日に要求書を提出。17日には他の電機大手でも要求が出そろう。