平野歩夢、人生最高の滑りで逆転の金メダル
大技トリプルコークが決め手、低評価が逆転への原動力に
2位で迎えた3回目。最終滑走の平野歩がトップのジェームズ(オーストラリア)を超えるために選んだのは、2回目と同じ演技構成だった。「高さ、着地の完成度を高められれば上回る、というのが自分の中にあった」。逆転へスタートを切った。
最初のジャンプ。大技のトリプルコーク1440(縦3回転、横4回転)を2回目よりもさらに高く、きれいに回り完璧に着地した。残り四つの技も、高難度かつ文句なしの出来。「自分のパフォーマンスでのマックスを出せた」。96・00点のハイスコアも当然だった。狙い通りの逆転劇で頂点に立った。
1回目で転倒。2回目はトリプルコーク1440を含めた5回のジャンプを決めたが、91・75点で首位には届かず。「おかしいなと思った。イライラして」と感情的になりかけた。しかし、「怒りとともに、いつも以上に集中できていた。普段と違う強い気持ちがあった」。この低評価が逆転への原動力になった。
自分を貫いた。通常と逆スタンスで背中方向に踏み切る「スイッチバックサイド」の技。高得点が出るため最近は多くの選手が取り組むが、平野歩は行わなかった。「前回の五輪でスコッティー(ジェームズ)がやった技。そこに乗っかりたくなかった。自分にしかできないルーティンを考えていた」。優勝の決め手となったトリプルコークこそが、その答えだった。
スケートボードで昨夏の東京五輪に出場し、冬季五輪では4歳でスノーボードを始めた時からの夢をかなえた。「(今後は)ちょっと休憩して、これからどういう道を進んでいくのかを考え直して、自分の中でのチャレンジをしていきたい」。一つのゴールにたどり着いた平野歩は、また新たな挑戦も視野に入れている。(時事)