市民支える「命のパン」、店主が募金で無料配布


食糧不足のアフガン、伝統の互助意識に基づき活動続く

市民支える「命のパン」、店主が募金で無料配布

パンを市民に配るラフマティさん(右)=4日、カブール(時事)

 アフガニスタンの首都カブールで、イスラム主義組織タリバンの政権奪取に伴う混乱の中、食料を確保できない市民にパンを無料配布する店がある。店主のメフル・ディル・カーン・ラフマティさん(58)は、アフガン伝統の互助意識に基づき、わずかでも余裕のある人から資金を募って「命のパン」を貧しい市民に配り続けている。

 朝晩は氷点下5度前後まで冷え込むカブール。ラフマティさんは4日も店の前で、全身を覆うブルカに身を包んだ女性らにパンを配っていた。

 「500アフガニ(約600円)あれば、パン25枚を無料で配布できる」とラフマティさん。タリバンが銀行預金引き出しや海外からの送金を制限する中、少しでも現金を手にできた人々が援助している。ただ、窮状を発信されたくないタリバンが取材に応じないよう圧力をかけたといい、取材には言葉少なだ。ロイター通信によると、無料配布を始めたのは約3年前から。昨年8月のタリバンの政権奪取前、店の前に集まるのは1日500人程度だったが、最近では約2000人に増えたという。

 世界食糧計画(WFP)は、アフガン国民の9割が十分な食料を得られていないと警告。国連機関などが支援を急ぐ一方、住民の間で「共助」の取り組みも続いている。(ニューデリー時事)