福島千里が引退、女子短距離界に輝かしい足跡


鋭いスタートとピッチで一時代を築く、世界への扉開ける

福島千里が引退、女子短距離界に輝かしい足跡

オンライン記者会見で現役引退を表明する陸上女子短距離の福島千里=29日午前

 日本女子短距離の歴史を塗り替え、一時代を築いた福島がスパイクを脱ぐ決断をした。33歳。昨年9月の全日本実業団対抗選手権に出場し、「(去就は)ゆっくり考えたい」と語ってから4カ月後の表明となった。近年はけがと闘う期間が長く、低迷していたものの、希代のスプリンターが刻んだ足跡は輝かしい。

 身長166センチ。細身からの切れ味鋭いスタートと、爆発的なピッチで飛び出す前半型だ。長年指導に携わった中村宏之さんは「(脚の)スイングスピードが速く、接地時間が短い。アメンボ走法でスイスイいく」とほれ込んだ。厳しい寒さがあっても北国のハンディなく練習が積める地元北海道の屋内トラックで、豊かな素質を磨いていった。

 19歳だった2008年4月、100メートルで11秒36の日本タイ記録をマークして一躍注目された。夏の北京五輪に同種目の日本勢で56年ぶりに出場。世界への扉をこじ開けた。

 2年後のアジア大会で短距離2冠、11年世界選手権では日本人初の準決勝進出と快挙が続いた。短距離界でトップレベルが遠かった男子よりもさらに壁が厚かった女子の日本勢が、世界に挑める可能性を示し、後進に与えた影響も大きかった。

 国内で張り合えるライバルが少なく、第一人者ならではの苦悩も垣間見えた。日本記録更新は16年が最後。一時は100メートルで「10秒台」の夢も抱かせたが、年齢を重ねるにつれて故障にも苦しんだ。それでも、全盛時にほど遠い状況ながらレースへの執念を見せ続けた。