聖職者の性的虐待、独大司教区で500人が犠牲に
ミュンヘンで報告書公表、「対応怠った」と前教皇を批判
ドイツのローマ・カトリック教会ミュンヘン大司教区とフライジング教区での聖職者の性犯罪に関する報告書が20日、ミュンヘンで公表された。
報告書は、同大司教区の指導者だった前ローマ教皇ベネディクト16世(在位2005年4月~13年2月)について、性犯罪4件への「対応を全く行わなかった」と批判。前教皇は書簡を通じて自身の責任を否定したが、報告書は「前教皇の説明は信頼できるものではない」としている。
ベネディクト16世は教皇就任前はヨーゼフ・ラッツィンガー枢機卿と呼ばれ、1977年から82年までミュンヘン大司教区の大司教だった。
報告書は、1945年から2019年に起きた聖職者、教会常勤職員による未成年者と成人へ性的虐待について、ミュンヘン・フライジンク大司教区が法律事務所に調査を委託して作成された。
報告書は「教会側の組織的な欠陥、責任者の対応ミスがあった」と明確に指摘。「少なくとも497人が犠牲者で、加害者は173人の神父、9人の執事を含む、少なくとも235人の教会関係者だ。ただし、それは氷山の一角で、実数はもっと多いことが推測できる」としている。
前教皇に関連するケースとしては、エッセン教区の神父が1980年に未成年者への性的虐待でミュンヘン大司教区に送られたが、当時大司教だった前教皇はこの神父を聖職に従事させるなど、適切な対応を怠ったという。神父はその後、29人の未成年者らに性的虐待を行っている。
前教皇の秘書、ゲオルク・ゲンスヴァイン大司教は、独紙ビルドとのインタビュー(1月14日)で、「前教皇は聖職者の性犯罪に関する調査を積極的に支持してきた。調査では質問に対して82ページに及ぶ書簡で答えている」と主張。「前教皇は神父をミュンヘン大司教区に受け入れることを決定した時、神父が性犯罪を行っていたことを知らなかった」と述べた。
ドイツでは聖職者による未成年者への性犯罪が明らかになったことを受け、教会から脱会する信者が急増している。
独司教会議が2018年公表した報告書によると、1946~2014年に少なくとも1670人の聖職者が3677人の未成年者に性的虐待を行った。(ウィーン小川敏)