映画「ブラックボックス 音声分析捜査」


航空機がアルプスで墜落、消された「音」の謎を解け

映画「ブラックボックス 音声分析捜査」

音声分析官マチューを演じたピエール・ニネ ©2020/WY Productions-24 25 FILMS-STUDIOCANAL-FRANCE 2 CINEMA-PANACHE Productions

 マチュー(ピエール・ニネ)は、パイロット志望だったが挫折し、今はフランス民間航空事故調査局(BEA)の音声分析官だ。鋭い聴覚を持つあまり前のめりに調査を進めようとして時に上司からたしなめられる。

 そんなある日、ヨーロピアン航空のアトリアン800型機がアルプスで墜落する。乗客300人、乗務員16人の生存は絶望的。安全な最新型航空機による事故に衝撃が走る。BEAの分析官ポロック(オリヴィエ・ラブルダン)は現場に駆け付ける。ボイスレコーダーも回収され、いつもならポロックに同行するマチューだったが、今回の事故からは外される。原因究明が急がれる中、ポロックは調査を始めるが、数日後に行方不明に。

 マチューはレニエ局長(アンドレ・デュソリエ)に呼び出され、夜の記者会見までに音を分析するよう命じられる。マチューの分析の結果、「コックピットに何者かが侵入した」という結論を出す。翌日のニュースには、イスラム過激派が乗客名簿に含まれていた事を報じたが、犠牲者の夫から「事故直前の留守電がある」と連絡が入る。留守電を聴くと、ブラックボックスと違う音に気づく。レニエ局長に報告するが、疑問を拭いきれない。ポロックが何かを掴(つか)んでいたのではないかと彼の自宅へと向かった。

 音声分析官マチューを演じたピエール・ニネは2014年の主演作「イヴ・サンローラン」で、セザール賞の最優秀男優賞を最年少で受賞。今作では実際の音声分析官に取材を敢行しリアルな演技を見せている。

 脚本も担当したヤン・ゴズラン監督の航空業界の今と未来の問題への意気込みを感じるサスペンス作品に仕上がっている。

 1月21日よりTOHOシネマズシャンテ他、全国公開。

(森 啓造)