中国での迫害逃れた在外少数民族、強まる危機感
北京五輪まで1カ月、民族抑圧の美化につながると危惧
開幕まで残り1カ月を切った北京冬季五輪に対し、中国での弾圧や迫害を逃れて亡命生活を送る少数民族の人々が危機感を強めている。五輪が中国の国威発揚やイメージアップに利用され、民族を抑圧する体制の美化につながりかねないと危惧しているためだ。
中国での弾圧を逃れたチベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世が住むインドには、ダライ・ラマを慕うチベット人が多数暮らす。首都ニューデリーのチベット人地区では、北京五輪のボイコットを呼び掛けるポスターが至る所に張られていた。
この地区で喫茶店を経営するツェリン・ヨウドンさん(33)は2004年、中国当局の監視をかいくぐり、主に徒歩で国境を越え、約1カ月かけてインドにやって来た。「僧院や寺院は壊され、移動も自由にできない」状況に耐えかねた家族がインドに送り出した。
「中国政府はカネを使って自由に振る舞えるかもしれないが、五輪は正しい政府の下で開かれるべきだ」。17年間離れ離れの家族を思い、涙をこぼした。
ダライ・ラマが住む北部ダラムサラにある「チベット青年会議」のソナム・ツェリン事務局長は、「国際社会は中国を批判するなら、大会をボイコットする義務がある」と語気を強める。「チベットの鉱物資源を収奪し、無数のチベット人の命を犠牲にして作られた血塗られたメダルだ」として、選手に参加を思いとどまるよう訴えた。
中国・新疆ウイグル自治区での迫害から逃れてきたウイグル族が暮らすトルコでは、有志が4日に首都アンカラでボイコットを呼び掛けるデモを計画。しかし、現地当局の許可が前日までに出なかったため準備が間に合わず断念した。
デモを企画していたアブドルハミト・カラハンさん(41)は「民族虐殺を行う中国の開催を許すべきでない」と断言。トルコを含む多くの国々が経済上の理由から中国に接近していることに危機感を示し、国際社会が今、中国に圧力をかけなければ「弾圧はいよいよ激しくなる」と恐怖を口にした。(ニューデリー、アンカラ時事)