マザー・テレサ団体、外国からの支援受け取れず


印政府が許可更新拒否、ヒンズー至上主義による「弾圧」か

マザー・テレサ団体、外国からの支援受け取れず

マザー・テレサの活動を受け継ぐ団体「神の愛の宣教者会」の修道女たち=2021年8月、インド・コルカタ(AFP時事)

 インド東部コルカタを拠点に貧しい人々の救済に尽力し、ノーベル平和賞を受賞したマザー・テレサの活動を受け継ぐ団体に対し、外国からの支援金を受け取るのに必要な許可の更新をインド政府が拒否した。ヒンズー至上主義を掲げるモディ政権による「弾圧」の一環という見方もある。

 インド内務省は昨年12月27日、マザー・テレサの活動を継承した「神の愛の宣教者会」が外国支援を受け取るための許可を年内いっぱいで更新しないと発表。声明で「敵意ある資金」が発見されたことが理由と説明した。団体の活動資金がすぐに底を突くことはないもようだが、先行きが懸念されている。

 政府は同月25日に更新を拒否。知らせを受けたコルカタ大司教区のドミニク・ゴメス司教総代理は、AFP通信に「残酷なクリスマスプレゼントだ」と憤った。野党・国民会議派幹部は「多数派(ヒンズー教徒)の計略のため、キリスト教徒を標的にした」と批判。内外メディアも問題を大きく取り上げた。

 2014年にモディ氏が首相に就任した後、キリスト教徒ら少数派に対する圧力が強まった。21年には、首都ニューデリー近郊でクリスマスソングを歌っていた学校の外にヒンズー強硬派団体が押しかけ、大声で抗議する様子が報じられた。教会の庭で聖歌を歌っていた信者が、改宗を強要したとして拘束された事例もある。

 一方、インド政府が外国系支援組織に神経をとがらせる背景には、宗教以外の問題もあると指摘される。民放NDTVによると、昨年末には国際NGOオックスファムなど約180の団体が外国資金受け取り許可の更新を拒絶された。オックスファムは各国で、一部職員の買春といった問題を抱えてきた。「神の愛の宣教者会」でも18年、インドで児童の人身売買に関与したとして、職員が逮捕されている。

 日本政府関係者は「かつてインドで外国支援団体職員を装い活動していたとして、欧米の情報機関職員が摘発されたことがある。インド政府が外国支援団体に厳しい理由の一つだ」と語った。(ニューデリー時事)