独新政権推進する水素発電、日系企業に商機
独電力大手RWEと川重が実証実験、水素積極活用が急務に
ドイツ政府は気候変動対策の一環として、水素を燃料に使う発電施設の整備に向けた取り組みを進める。川崎重工業や三菱重工業などの日系企業が水素発電の研究開発に力を入れており、商機へ期待が膨らみそうだ。
水素発電は水素を燃やしてタービンを回し、電力を発生させる。水素は燃焼時に二酸化炭素(CO2)を排出せず、クリーンなエネルギー源として注目されている。
ドイツでは中道左派の社会民主党(SPD)と環境政党の緑の党など3党による連立政権が2021年12月に発足。電力会社がガス火力発電所を新設する際には、将来的に水素発電に転換可能な設計とするよう求める方針を明らかにした。
これと前後し、ドイツ電力大手RWEと川重は、水素燃料だけで30メガワット級の発電を行う実証試験を24年以降に独北部ニーダーザクセン州で開始すると発表した。川重のタービンは水素100%でも、天然ガスと混ぜても燃料として使えるのが特徴で、「米国や中東などでも水素発電への関心が高まり、事業拡大が期待される」としている。
水素の製造過程で化石燃料を燃やし、CO2を排出すると温暖化対策の効果は薄い。RWEと川重の実証試験では、風力由来の電力で製造した水素を利用する。
三菱重工も独北部ハンブルクで、風力や太陽光を使って水素を製造する研究事業に参加。25年ごろの水素製造開始を目指している。
メルケル前政権は国内の電力の65%を30年までに再生可能エネルギーで賄う目標を掲げていたが、新政権はこれを80%に引き上げた。石炭火力発電の全廃時期も従来計画の38年から30年に前倒ししたため、風力・太陽光発電の推進にとどまらず、水素の積極活用が急務となった。(フランクフルト時事)