岐阜県飛騨市、困り事が体験プログラムに
全国から「お助け」募り交流に、「ヒダスケ!」が好評
「畑の収穫を手伝って」「うちの商品を試して」-。市民の困り事をインターネットで公開して全国から「お助け」してもらい、交流につなげる岐阜県飛騨市の取り組み「ヒダスケ!」が好評だ。人口減少に悩む過疎地の課題が魅力的な体験プログラムになる仕組みが評価され、自治体の問い合わせも相次いでいる。
約2万3000人の人口の約40%が65歳以上という同市は、地域の活力維持に腐心してきた。2017年には「飛騨市ファンクラブ」を設立。会員は全国約7800人に上り、新型コロナウイルス流行前は東京や大阪で会合を開くなどしてきた。
ヒダスケ!はファンクラブの発展形として20年4月にスタート。「地域のために何かできないか」という会員の声を受けて仕組みを考案した。具体的には、困り事のある市民が市に相談すると、ホームページに「プログラム」として掲載され、助けてくれる参加者を全国から募集。受け入れる市民はプログラム主催者となる。
これまでオンラインを含む約100プログラムが行われ、内容は▽リンゴの収穫▽和紙の原料「楮(こうぞ)」の皮むき▽田植えの手伝い▽インターネット交流サイト(SNS)活用のアドバイス▽農家のロゴデザイン作り▽商品化に向けたモニター-などさまざま。関東や東海地方などから来た参加者は10月末時点で延べ723人に上り、40、50代が多いという。
参加者は現地で使える電子地域通貨「さるぼぼコイン」のほか、野菜や果物など主催者の善意に基づく「オカエシ」がもらえる。
市内の農家池田俊也さんは、ミニトマトの収穫やまき割りを依頼。「労働だと思っていたことが、立場の違う人にはアトラクションになるのだと驚いた。楽しんでリピートしてくれる人もいて、今では一緒に事業を盛り上げてくれる仲間に変わった」と話す。
30を超える自治体から問い合わせがあり、10月には日本デザイン振興会の21年度グッドデザイン賞を受賞した。都竹淳也市長は「地域の困り事はマイナスのイメージと捉えられるが、ヒダスケ!では地域資源になる」と説明。「過疎地のモデルデザインになれば」と語る。