吉田沙保里、真の強さで天国の父に約束果たす
レスリング女子W杯、日本が2年ぶりに優勝
どんな状況でも、吉田の強さは揺るがなかった。亡き父栄勝さんの遺影を両手でがっしりつかんで、マットに上がった吉田。第1ピリオドを4-0で奪い、ポイントを重ねて残り27秒でバックに回り込んでテクニカルフォール勝ち。遺影に「やったよ」と報告した。
「こんな状況の中、よく戦えたと思う」。大会前に左膝内側側副靱帯(じんたい)を痛め、ヘルペスも発症。そのさなかに栄勝さんの訃報を受けた。「まともな練習ができていないのに、試合に出て大丈夫か」と不安がよぎったが、「出ると決めた以上は強い気持ちを持ち、優勝して父を喜ばせよう」と言い聞かせていた。
フィギュアスケート女子の浅田真央(中京大)が母を亡くしても、大会に出場したことを思い出したという吉田。チームメートや他競技の選手からの激励にも支えられた。逆境を乗り越えて立った表彰台の真ん中。吉田は白い布に包んだ栄勝さんの遺骨を抱えて上がった。
「この優勝にはいつもとは違った喜びがある。今後は五輪4連覇のために、父のために頑張りたい」。真の強さを見せた女王は、次の約束を明かした。