香港、市街地に出没するイノシシの対応に苦慮
被害拡大で殺処分へ方針転換、保護団体からは反対の声も
香港で市街地に出没するイノシシによる被害が拡大し、当局が対応に苦慮している。今月には警察官が襲われて大けがをしており、香港政府は積極的な殺処分に方針を転換。急増したイノシシの駆除は容易でなく、保護団体からは反対の声も上がっている。
香港島では金融街のすぐ背後に山林が迫り、イノシシは市民の生活圏にも頻繁に現れる。今年6月には子供のイノシシが地下鉄車両に乗り込み話題になったが、ごみをあさられるなどの被害も多い。
香港政府はこれまで、避妊処置や遠隔地への移送といった穏健な対策を取ってきた。しかし、林鄭月娥行政長官は今月16日の会見で、市街地に迷い込んだイノシシの「人道的処分」を表明。「餌付け行為への罰則強化もあり得る」と警告した。
17日夜には、農漁業当局が車道を封鎖した上でパンをまいてイノシシをおびき寄せ、薬物投与により7頭を処分。保護団体は「餌付けを禁じておきながら、食物で誘い出して殺すとは矛盾している」と批判した。
香港政府の資料によると、2016年に583件だったイノシシに関する通報は、19年には1184件に急増。イノシシ狩りは従来取り締まり対象だったが、当局は方針を一転させ、狩猟免許の発行再開も検討している。(香港時事)