トルコ南部、シリア難民受け入れに柔道が一役


市民との融和を期待、阿部きょうだいが子供たちの間で人気

トルコ南部、シリア難民受け入れに柔道が一役

柔道の練習に参加したトルコ人のシャジエ・ブルドゥムさん(左から2人目)とそのきょうだいたち=8日、トルコ南部キリス(時事)

 シリア国境沿いに位置するトルコ南部キリスで、柔道が市民とシリア難民の子供同士を結び付ける役割を果たしている。キリスの当局者らは、柔道を通じた青少年交流を自治体の重要事業と位置付け、これをきっかけに市民と難民の融和が進むことを期待している。

 「始め」「礼」―。キリス中心部の体育館に敷かれた畳の上で、子供たちがコーチの掛け声に合わせて乱取りに汗を流していた。4歳から20歳までのトルコ人約170人とシリア人80人前後がそれぞれの都合に合わせ、練習に参加している。

 キリスで5年間柔道を続けているシリア人男性のアリ・ラマダンさん(19)。2012年にシリア北西部イドリブ県からキリスに逃れてきた。「今は薬局で働いているが、外の世界には信用できない人も多い。友人の大半は柔道を通じてできた」と話す。トルコ人女性のシャジエ・ブルドゥムさん(15)は「シリア人のアラブ文化はトルコと大きく異なるが、柔道がわれわれを近づけてくれる」と笑顔を見せた。

 キリスには、11年にシリアで内戦が始まった直後から難民が押し寄せた。現時点でシリア人は10万人を超え、全住民の半分ほどを占めるとみられる。生活習慣や言語が異なる市民と難民の不和の解消が大きな課題となっているが、東洋の武道に漠然とした関心を持つ人は双方に多く、地元当局は柔道に注目した。

 交流事業で中心的な役割を担うキリスのエルクメン副市長によると、東京五輪できょうだいで金メダリストとなった阿部一二三、詩両選手が子供たちの間で人気があるという。エルクメン氏は「練習の中で阿部きょうだいのビデオを流している」と述べ、日本との交流を進めることへの意欲を示した。(キリス=トルコ=時事)