災害時不明者、20道県が氏名公表基準を策定
11府県が「検討」、創作活動効率化、迅速救助へ策定加速
災害発生時の安否不明者をめぐり、人命救助に必要と判断した場合に氏名を公表するよう定めた基準を策定している自治体が少なくとも20道県に上ることが、時事通信の調査で分かった。時間と人的資源が限られる発災直後、不明者の情報を広く募ることで救助対象者を絞り込み、捜索活動の効率化につなげる目的だ。
調査は10月中旬時点で、全国47都道府県を対象に実施。11府県も市町村などと共に策定作業を進めており、検討が加速している実態が明らかになった。
基準では、大規模災害時に「生命や財産保護のため緊急でやむを得ない」場合、家族の同意がなくても氏名を公表するなどと明記。
ただ、情報を秘匿する必要があるストーカーや家庭内暴力(DV)被害者らは公表対象から除外すると規定している。
氏名公表については、個人情報保護の観点からためらう自治体もあるが、近年では公表により、多くの情報が寄せられ、捜索が円滑になった事例がある。7月に静岡県熱海市で発生した土石流災害でも、県が発生から3日目に安否不明者を公表し、迅速な捜索につながった。これを踏まえ、同県は公表基準の策定を進めている。
検討中の自治体は、公表に当たっての課題を挙げた。被災者救命は、生存率が急速に下がる「災害発生から72時間」以内が重要で、岐阜県は「判断が遅れると意味がなくなる。どの段階で公表するかが課題だ」(担当者)と指摘する。宮城県は公表後に大量に寄せられる情報に市町村の対応が立ち行かなくなることを懸念。担当者は「電話回線がふさがる可能性もある」と話す。
一方、検討に着手していない自治体からは「個人情報を出してほしくない住民がいる」(青森県)、「国が基準を定め、全国統一にすることが望ましい」(秋田県)といった意見があった。