「白井晟一入門」展、異色の建築家の足跡をたどる


白井晟一の一生をひもとく、渋谷区立松濤美術館で開催中

「白井晟一入門」展、異色の建築家の足跡をたどる

展示されている建築家白井晟一と滴々居

 「哲学の建築家」と評される白井晟一(1905~83)が設計した渋谷区立松濤美術館(東京都)で開館40周年を記念し、「白井晟一入門」展(2部構成)が開催中だ。白井は、独学で建築の道に進んだ異色の建築家で独自の美的感覚と空間構成で、特徴ある建物を世に送り出した。一方で著作や書家としての活動なども行った。

 第1部「白井晟一クロニクル」(12月12日まで)では、白井が遺したオリジナル図面、建築模型、装丁デザイン画、書などを展示し、その一生をひもといている。白井に関しては「仙人」のような印象を受けると言われる。要因は大雨や台風のときの雨漏りの音が名の由来となった自邸「滴々居」にあるとされた。未完のうちに住んだことから手洗場がなく、「おまる」で用を足した。そのため「あの家はトイレがないから気をつけろ」とうわさされた。その当時の白井の姿と建物を見ることができる。

 「滴々居」解体後に造られた邸宅「虚白庵(こはくあん)」(現存せず)は一転して最高級木材のブラジリアン・ローズウッドを家具に使用。さらに騒音や振動を遮断する凝った造りになっていた。同展では実際に使われていたガラス扉などが展示されている。白井はこの邸宅で、陽(ひ)が沈むころ起床し、陽が昇ると就寝する生活を送った。

 学芸員からは「当時白井は建築家としてはあまり評価されていなかったが、芸術家との交流を多く持ち仕事も依頼されていた。芸術家に近い建築家だったのではないか」と解説する。

 第2部「Back to 1981建物公開」(2022年1月4日から30日まで)では、晩年の代表作の一つ、松濤美術館に焦点を当てた展示を行う予定。

 (村松澄恵)