EUが北極圏に事務所開設へ、中露を牽制


グリーンランドに、気候変動対策で石炭など開発禁止模索

EUが北極圏に事務所開設へ、中露を牽制

13日、ブリュッセルで記者会見する欧州連合(EU)のシンケビチュウス欧州委員(環境・海洋・漁業担当)(AFP時事)

 欧州連合(EU)欧州委員会は13日、デンマークの自治領グリーンランドに北極圏への関与を強める目的で新たな事務所を開設することを発表した。北極圏への本格的な進出を模索するロシアや中国を念頭に置いたものとみられる。

 英グラスゴーで31日から開催される国連気候変動枠組み条約の第26回締約国会議(COP26)を控え、EUは北極圏での石油や天然ガスなどの開発を国際的に禁止するよう働き掛けていく方針だ。

 EUのシンケビチュウス欧州委員は13日、ブリュッセルで記者会見し、北極圏をめぐる新たな戦略を明らかにし、北極圏の気温上昇が地球全体に及ぼす影響を踏まえ、気候変動対策が特に重要だとの認識を示した。同時に温室効果ガスを発する石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料を地中に留め置くことの重要性を訴え、開発を止めるよう呼び掛け、グリーンランドで監視も行っていく方針を明らかにした。

 今後、EUは北極圏での石油や石炭、さらに天然ガスなどの開発や購入を国際的に禁止するよう働き掛けていくと表明した。近年、ロシアの北極圏での軍備増強が目立っており、中国もインフラ投資に参入。多くが手付かずの北極圏で、地政学的な競争が激化し、覇権争いになることをEUは懸念している。ただ、レアアースなど戦略的に重要な鉱物資源については、環境に配慮した形での採掘を後押しするとしており、北極圏でのEUの存在感を高め、ロシアや中国が国益追求のために荒らさないよう監視を強めていく構えだ。(パリ安倍雅信)