イラク総選挙、反米強硬のサドル師派が躍進へ


反政府デモに応じ総選挙も投票率最低、連立交渉は難航必至

イラク総選挙、反米強硬のサドル師派が躍進へ

11日、バグダッドで、選挙結果を聞いて喜ぶイラクのイスラム教シーア派指導者サドル師の支持者たち(AFP時事)

イラク総選挙、反米強硬のサドル師派が躍進へ

イラクの地図

 イラクで10日投票が行われた国会(定数329)選で、11日までの開票の結果、イスラム教シーア派指導者サドル師派の政党連合が第1勢力を維持する見通しとなった。ただ、単独で過半数を得る政党はなく、新首相選びに向けた連立交渉は難航が予想される。

 ロイター通信によれば、サドル師派は70議席以上を獲得する見込み。スンニ派のハルブシ国会議長率いる連合と、マリキ元首相の連合がそれぞれ30議席台で続く。イラク国内で隣国イランの支援を受けるシーア派民兵との関係が深い政治勢力は伸び悩んだもようだ。

 かつて反米強硬で知られたサドル師の連合は前回2018年の総選挙で勝利。今回の躍進で新政府樹立への多数派工作はサドル師主導で進むとみられる。イランと距離を置くなど外国の介入に反対する姿勢を貫くサドル師は11日の演説で「イラクの内政に干渉しない限り、すべての国々を歓迎する」と強調した。

 イラクでは年末までに駐留米軍の戦闘任務が終了する予定。連立交渉や新政府はその行方を大きく左右しそうだ。米国との協力体制に加え、イランやサウジアラビアなど近隣諸国との関係を含む外交政策にも影響が及ぶとみられる。

 今回の選挙は、19年にイラク全土で起きた反政府デモの要求に応じる形で、20年に就任したカディミ首相が予定を前倒しして実施した。選管当局によると投票率は41%。有権者には腐敗や治安を改善できない既存勢力への不信感が強く、政治参加による変革への期待感も薄い。03年のフセイン政権崩壊以降で5回目となる総選挙だったが、過去最低の投票率に落ち込んだ。(カイロ時事)