日本一の高層ビル「あべのハルカス」全面開業


成否が大阪百貨店の生存競争を勝ち抜く試金石に

日本一の高層ビル「あべのハルカス」全面開業

大阪市の天王寺公園内に設置されている期間限定の写真撮影スポット=7日午後、大阪市天王寺区

 高さ日本一の高層ビル「あべのハルカス」が7日、全面開業した。中核となる商業施設は、国内最大級の約10万平方メートルの売り場面積を誇る百貨店「あべのハルカス近鉄本店」。ここ数年、大阪では、JR大阪駅前の「グランフロント大阪」など大型商業施設の開業が相次いでいる。ただ、三越伊勢丹が大幅縮小を発表するなど競争は厳しく、大阪の百貨店業界は決して順風ではない。

 「一言で言えば、オーバーストアだ」。ある百貨店の店長は大阪の現状をこう表現する。

 梅田地区には、2012年に増床した阪急百貨店うめだ本店、13年開業の「グランフロント大阪」が並ぶ。難波・心斎橋地区に大丸や高島屋など老舗百貨店。ハルカスのある阿倍野・天王寺地区には、東急グループの「あべのキューズモール」や駅ビルなど複数の大型商業施設が林立する。

 過当競争が続く中、三越伊勢丹ホールディングス(HD)は今年1月にJR大阪駅ビル内の「JR大阪三越伊勢丹」の百貨店売り場を6割縮小すると発表した。東京の名門百貨店だが、「(阪急、阪神、大丸に続く)四つ目の百貨店で取引先との協力関係もうまくいかなかった」(杉江俊彦三越伊勢丹HD常務)という。

 13年6月に先行開業した「あべのハルカス近鉄本店」も同年11月までは売上高が目標をやや下回る状態。ハルカスを運営する近畿日本鉄道の小林哲也社長は「百貨店単独ではなく、他事業と連携することで差別化できる」と強調。今回開業した展望台やホテル、美術館と連携した割引サービスなどを展開していく考えを示している。

 小林社長は開業式後、「日本一は営業上、PRしやすい言葉」と報道陣に語った。「高さ300メートル、高層ビル日本一」の称号を武器に、どう集客効果を高めるか。ハルカスの成否は、大阪百貨店戦争を勝ち抜く試金石となる。