政府、災害ボランティア育成へ研修制度を創設
住民の避難生活支援を強化、災害関連死を防ぐのが目的
政府は、災害被災地で活動するボランティアが、住民の避難生活を支援するスキルを学ぶ研修制度を新たに創設する。避難所の運営などに関して一定の知識・経験を持つ人材を育て、被災者の生活環境の確保につなげて災害関連死を防ぐのが目的。国がボランティアの育成に乗り出すのは初めて。
全国各地の社会福祉協議会が窓口となり被災地で活動するボランティアは、主にたまった土砂や家財の撤去作業に当たっている。ただ、食事やトイレ、寝る場所の確保のほか、高齢者らへの配慮など避難所運営には知識や経験が必要で、一般のボランティアがこうした業務に携わることは通常ない。
内閣府は今年度中に有識者らを交えた会議を設け、被災者生活支援の具体的な研修内容の検討に入る。研修は、避難所に一定期間常駐し、運営を支援する「リーダー」、複数の避難所を巡回し、指導する「アドバイザー」、医療・福祉の専門家や自治体などと連携する「コーディネーター」の役割に分けて実施する方針。2022年度に、一部の都道府県を対象にモデル実施する考えだ。
研修を通じて、ボランティアの掘り起こしや防災に携わる人材育成に取り組み、地域の防災力を高める狙いもある。研修意欲を高めるため、修了認定制度を設ける考えだ。広域の大規模災害に備え、将来的には他地域にボランティアの派遣を要請できる登録システムの構築も検討する。
16年の熊本地震では、車中泊など避難生活を通じた心身不調による災害関連死が、死者全体の約8割を占めた。被災者の生活環境改善が課題となる中、避難所運営の支援を強化することで、被害認定や罹災(りさい)証明書の発行など業務を多数抱える市町村の負担軽減も期待される。