地球科学の異例受賞「分野の壁、破った偉業」


真鍋淑郎氏にノーベル物理学賞、国内研究者から驚きと称賛

地球科学の異例受賞「分野の壁、破った偉業」

「KYOTO地球環境の殿堂」の表彰式に出席した米プリンストン大上席研究員の真鍋淑郎氏(左)とノーベル平和賞受賞者で「もったいない」運動で知られるワンガリ・マータイさん=2010年2月、京都市

 「地球科学が認められた」「分野の壁を破った」。米プリンストン大の真鍋淑郎氏(90)にノーベル物理学賞が授与されることが決まった5日夜、同じ気候科学分野の専門家からは口々に驚きと偉業をたたえる声が上がった。

 北海道大理学研究院の見延庄士郎教授(気候科学)は「ノーベル賞に地球科学賞はない。分野の壁を越えた受賞は、いかに重要な研究だったかを示している」と驚きを隠さない。重要な業績の一つである気候モデルがなければ、地球温暖化や長期的な気候の予測は不可能だったとし、「(気候変動に関する国際合意の)パリ協定や再生可能エネルギーの導入にもつながった。今日の社会の在り方を大きく変えた偉業だった」と称賛した。

 見延教授は学会などで真鍋氏と懇談したことがあり、「世界でも超一流の研究者なのに偉ぶるところは全くない。非常に気さくで、若い研究者を元気づける人柄」と回想。「気候科学は人類の生存に直接関わる学問だ。受賞はその重要性を強調するものだと思う」と力を込めた。

 国立環境研究所の江守正多・地球システム領域副領域長(気候科学)も「とてもフランクで明るく、研究に夢中になると子供みたいにずっと話をしていた」と振り返る。受賞決定の一報に「とてもびっくりしたと同時にうれしかった。真鍋さんが築いた礎の上にわれわれの研究が全てある。天地創造のようなものだ」とたたえた。

 東京大先端科学技術研究センターの中村尚教授(気候変動科学)は「この分野はノーベル賞を取れないのではないかと思っていた」と明かす。「留学した際に真鍋先生と研究室が同じ建物で、研究者の在り方などを学ばせてもらった」といい、「地球科学が認められ、感無量だ」と感激した様子だった。