自治体、路上生活者のワクチン接種が本格化
支援団体通じ呼び掛け、本人確認書類なくとも柔軟に対応
新型コロナウイルスのワクチン接種が進む中、自治体は路上で生活するなどホームレス状態にある人を対象とした接種に本腰を入れている。定まった住所を持たず、接種券を受け取れない人が少なくない中、支援団体と協力して一人でも多くの当事者に呼び掛け、集団接種などにつなげている。
東京都台東区は8月下旬から支援団体を通じて周知。9月10、11両日に城北労働・福祉センターで1回目の集団接種を行った。希望者はあらかじめ同2、3両日に同センターに来てもらい、整理券を配布。身分証など本人確認書類のない人には氏名や生年月日などを聞き取り、接種当日に確認するようにした。
集団接種では区内の路上やインターネットカフェなどで寝泊まりする30~80代の計89人が米ファイザー製の接種を受けた。昨年10月から野宿生活をする男性(51)は接種後、「打ててよかった」と笑顔を見せた。
東京都豊島区は10月30日に1回目の接種を行う。支援団体「TENOHASI(てのはし)」などと協力し、同23日の東池袋中央公園での炊き出しで事前予約を受け付ける。100人程度の接種を想定。区担当者は「ワクチン不足で対応が遅れていた。炊き出しに来た人を接種に誘導することを考えている」。
横浜市では8月3~5日に市役所内で、9月10日には中区の市寿町健康福祉交流センターで路上生活者向けの接種相談会を開催。希望者にはその場で接種券を発行して予約手続きを行い、10月下旬までに約30人が2回目の接種を終える見通しだ。
厚生労働省は4月、支援団体と協力しながら接種を周知するよう自治体に通知。7月には本人確認書類がなくても自治体の裁量で柔軟に対応するよう求めた。同省によると、1月時点の全国のホームレスの人数は3824人。