米南部国境、ハイチから移民流入で混乱続く
国境警備隊の対応に批判、人道危機に苦慮するバイデン政権
米南部国境にカリブ海の島国ハイチから多くの移民希望者が押し寄せ、混乱が続いている。国境警備隊がこうした人々を追い返す映像が衝撃を広げ、問題が拡大。バイデン政権は送還手続きを進めるが、「国際規範に反する」「移民に冷淡だったトランプ政権と同じ」などの批判にさらされている。
1万4000人に及ぶ移民希望者が大挙したのは、ハイチで8月に起きた大地震がきっかけだ。7月の大統領暗殺で政情が不安定化したことも国外脱出に拍車を掛けている。メキシコとの国境に接するテキサス州デルリオでは、橋の下で大勢の人が野宿生活を送り、国境警備隊が人々の流入を防ごうと、馬に乗って追い払う姿が報じられた。
不法越境問題を担当するハリス副大統領は21日、国境警備隊による「不適切な扱い」への「深刻な懸念」を表明。しかし、テキサス州のアボット知事(共和党)は「国境を守り、バイデン政権による混乱に対処する」と述べ、警備強化の方針を示した。
野党共和党は、移民の受け入れに寛容な民主党の姿勢が危機を招いたと追及する。上院共和党トップのマコネル院内総務は「民主党が誤解を与えたため、悪夢のような条件の下に弱い立場の人々を呼び寄せてしまった」となじった。バイデン政権は20日、2022年度の難民受け入れ上限を12万5000人とし、21年度から倍増する目標を示している。
一方、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は強制送還について「保護の必要性を勘案しておらず、国際規範に矛盾する」と強調。米政府に移民希望者の受け入れを求めた。
22日のサキ大統領報道官の記者会見では、記者が「(送還は)あなた方が非人道的と批判したトランプ政権と同じ手法ではないか」と質問。サキ氏は「移民政策ではなく、新型コロナウイルスの大流行による保健上の理由だ」と釈明に追われた。
国務省は23日、フット・ハイチ担当特使が辞任したと明らかにした。米メディアによると、「送還は非人道的で非生産的」と述べているといい、抗議の辞任とみられる。国務省は「米政府は安全に、整然と、人道的な移民政策を続ける」とコメントした。(ワシントン時事)