忘れられた黒人音楽フェス、50年ぶりに再発見
ドキュメンタリー映画「サマー・オブ・ソウル」公開中
1969年米国ニューヨーク州サリバン郡で開催されたあらゆるジャンルの音楽が集まったウッドストック・フェスティバル。米国音楽史に残るものとして後世に語り継がれている。
同じ頃、160㌔離れたニューヨーク州ハーレムでも6週間にわたり、音楽祭が行われた。ウッドストックにも負けない30万人以上の人々が訪れたとされる。
この音楽祭は「ハーレム・カルチャラル・フェスティバル」と呼ばれたが、映像が残るウッドストックと比べ、ハーレムのほうは映像に収められていたが約50年間、地下室に埋もれ、表に出ることなく忘れ去られていた。発見されたその映像をまとめ、編集したのが現在公開中のドキュメンタリー映画「サマー・オブ・ソウル」だ。
映像には、若き日のスティーヴィー・ワンダー、圧倒的な声量で魅せるゴスペルの女王マヘリア・ジャクソンとメイヴィス・ステイプルズ、ウッドストックにも出演したスライ・アンド・ザ・ファミリー・ストーンなど、黒人を代表するアーティストたちが集った。 ウッドストックが「ラブ&ピース」を掲げ比較的白人が中心だったのに対しハーレムは、黒人中心の音楽フェスティバルだった。どちらかと言えば動的なウッドストックとは違い、非常に静的なもので、開催1年前に暗殺されたキング牧師を追悼する意味合いもあった。それだけに酒やドラッグといった退廃的なものはなく、歌と音楽を純粋に楽しみ、生き生きとした黒人たちの姿を映し出している。監督は、ドラマー、音楽プロデューサーとして活躍するアミール・“クエストラブ”・トンプソン。
(佐野富成)