広がる「文革再来」懸念、習氏3期目と関連か
中国官製メディア掲載文が発端、激しい政治運動始まるか
中国の官製メディアが先月下旬、「深い変革が進んでいる」と訴える文章をインターネット上に一斉に掲載し、建国の父、毛沢東が発動した文化大革命(文革)のような激しい政治運動が始まるのではないかという観測が出ている。習近平国家主席が慣例を破り来年の共産党大会で3期目入りすることが確実視される中、習氏を毛と並ぶ指導者に位置付けようとする動きと関連している可能性がある。
文章を書いたのはネット上で論説を発表している李光満氏。共産党機関紙・人民日報や国営新華社通信、中央テレビを含む多くの主要メディアが8月29日、「誰もが感じられる深い変革が進んでいる」と題する李氏の文章をネットに転載した。
李氏は、習政権による経済や芸能界への統制強化を「経済、金融、文化、政治で深い変革が起きている。深い革命と言ってもいい」と称賛。「この深い変革は党の初心・社会主義の本質への回帰だ」と強調した。
さらに「今回の変革で、(中国の)市場は資本家が一晩で大金持ちになれる天国ではなくなる。われわれは一切の文化の乱れを整理する必要がある」と主張した。これに対し、多くの知識人が「改革開放の否定と文革の再来を連想させる」と受け止めた。
人民日報系の環球時報編集長、胡錫進氏は9月2日、ネット上で李氏に反論。「まるでこの国が改革開放に別れを告げるような言い回しだが、重大な誤りだ」と断じた。
胡氏は対外的に強硬な言動で知られ、習政権の立場を非公式に代弁しているとも言われる。李氏の主張に強い警戒が広がったため、胡氏が「火消し」をした可能性がある。また、2人の論争は体制内の路線対立を反映しているとも考えられ、「来年の党大会に向けた駆け引きが始まった」(知識人)という見方もある。
李氏の主張が注目されたのは「毛路線への回帰」が全くの絵空事ではないように見えるためだ。最近、学校で習氏の指導思想を必修化したり、未成年のオンラインゲームの利用時間を週3時間に制限したりするなど、思想や国民生活を厳しく統制する動きが拡大。党の文書や博物館の展示で、習氏を毛と同様に別格の指導者として扱う傾向も強まっている。(北京時事)