EU各国、難民危機再来に強い警戒感、阻止急ぐ
アフガン周辺国への支援に軸足、協力を得られるかは不透明
欧州連合(EU)各国はアフガニスタンからの自国民や現地協力者らの退避作戦を終え、今後はアフガン国内や周辺国における避難民支援に軸足を移す構えだ。難民危機再来への警戒感は強く、欧州流入の未然阻止を急ぐ。
ロイター通信によると、ドイツは5347人(うちアフガン人4100人超)、イタリアは5011人(同4890人)、フランスは約3000人(同2600人超)を出国させるなどEU各国は退避作戦に尽力した。しかし、31日期限の駐留米軍撤収で首都カブールの空港の安全確保は困難となり作戦を終了。退避を望む多くのアフガン人協力者らが取り残される。
各国は「作戦終了後も彼らに責任を持つ」(クランプカレンバウアー独国防相)などと強調。仏はマクロン大統領が退避継続のためにカブールでの安全区域設置を提唱し、アフガンの実権を握るイスラム主義組織タリバンとの交渉も始めた。
ただ、協力者ら以外のアフガン難民受け入れ拡大には、各国とも及び腰なのが実情だ。
特にシリアやアフガンの難民・移民が欧州に殺到した2015年の危機で最前線となったギリシャは「不法移民の玄関口にはならない」(ミタラキス移民相)と強調。流入元であるトルコとの国境に長さ約40キロのフェンスも完成させた。
また、オーストリアのクルツ首相は、4万人超のアフガン難民を引き受けているとして追加負担拒否を表明。欧州は「15年の過ちを繰り返してはならない」と訴える。
EUは31日、緊急内相会議を開催。難民らの欧州到達の「防波堤」役を期待し、パキスタンやイラン、トルコなどへの支援や連携を重視する方針を確認する見通しだ。
EUは16年、資金援助と引き換えに難民を引き留めてもらうことでトルコと合意し、難民危機を乗り切った経緯がある。しかし、国内に現在約400万人の難民を抱えるトルコは「さらなる負担は問題外だ」(チャブシオール外相)とけん制。EUの思惑通りに各国の協力を得られるかは不透明だ。(ブリュッセル時事)