ドゥテルテ氏、来年の大統領選で副大統領候補に
権力維持のための奇策、訴追回避のためか、違憲の恐れも
フィリピンのドゥテルテ大統領(76)は、来年5月の大統領選に副大統領候補として出馬することを決めた。与党PDPラバンが24日、明らかにした。自身の権力維持を図るための奇策だが「憲法に反する恐れがある」と懸念も出ている。
ドゥテルテ氏は2016年6月に就任した。憲法は、大統領職を1期6年までと規定している。大統領を務めた者が副大統領候補として出馬した例はない。
序列を落としてまで権力の座にとどまる狙いについて、フィリピン大のフランコ教授(政治学)は「退任後に待ち受ける多くの訴追を回避するため」と分析する。
ドゥテルテ氏は麻薬対策に力を入れ、容疑者が抵抗した場合は容赦なく射殺するよう警察に指示した。「麻薬戦争」と呼ばれる。治安が大幅に改善し、高支持率につながった半面、「超法規的な殺人が続出した」と批判を浴びている。
警察によると、麻薬戦争で16年7月~20年10月に7987人が死亡したが、人権団体は実際の犠牲者が2万7000人を超えると主張。オランダ・ハーグの国際刑事裁判所(ICC)も捜査しており、ドゥテルテ氏は訴追へのけん制を繰り返している。
大統領選の投票は来年5月9日に行われる予定で、正副大統領は別々に選ばれる。大統領職にはラクソン上院議員(73)が出馬を表明。他に、ドゥテルテ氏の長女でダバオ市長のサラ氏(43)や、プロボクシングで世界6階級を制したパッキャオ上院議員(42)も出馬が有力視されている。ドゥテルテ氏と組む大統領候補は決まっていない。
7月に行われた世論調査で、ドゥテルテ氏は副大統領候補の中でトップとなる18%の支持を得ていた。
しかし、大統領が辞任したり死亡したりした場合は副大統領が昇格する。法律の専門家は「憲法で禁じられた再選への裏口となりかねない」と警戒している。(マニラ時事)