美術品ネット競売が人気、コロナ禍で広がり


気軽に出席可能に、信用性向上にデジタル技術も後押し

美術品ネット競売が人気、コロナ禍で広がり

SBIアートオークションがオンライン・会場併用で開催した美術品オークション=4月24日、東京・代官山(同社提供)

 美術品オークションの人気が広がりを見せている。新型コロナウイルス対策のためインターネットで参加できる機会が増え、気後れしていた向きや地方の人も気軽に出席できるようになった。デジタル技術により落札品の信頼性が高まったことも活況を後押ししている。

 感染拡大を受け、美術品競売の現場も対応を迫られた。SBIアートオークション(東京)は昨年6月、来場者を通常の5分の1の30人に絞り、ネット上でも会場の映像を見ながら入札できるようにした。すると30代以下が増え、新規登録者は700人超と以前の倍以上に膨らんだ。30代経営者は「移動中でもスマートフォンで参加できて便利だ」と話す。

 購入理由では、投資目的に加え、コロナ禍で観賞用のニーズが高まっているという。自宅からのウェブ会議が多くなり、「背景の彩りに絵が欲しい」(20代会社員)との声が聞かれる。

 ネット競売を技術面で支えるのが、暗号資産の基盤技術となるブロックチェーン(分散型台帳)を用いて取引を記録する「NFT(非代替性トークン)証明書」だ。

 SBIアートオークションは2019年4月から希望する落札者に出品や取引の履歴を裏付ける証明として発行し、500点超を出した。内容の改ざんが困難で、取引の信用性を高めるとされる。藤山友宏取締役は「オンラインでも高値で落札されるようになり、平均落札価格が上がった」と指摘する。

 同業のシンワワイズホールディングスも今年1月にオンライン競売を本格的に導入。参加者の裾野拡大につながっており、倉田陽一郎社長は「今後も参加しやすい仕組みをどんどんつくりたい」と意欲を示す。