デジタル化後押し、5G投資の優遇税制の延長を


「スマート」工場や農業など「ローカル5G」整備を対象に

デジタル化後押し、5G投資の優遇税制の延長を

自動操舵(そうだ)システムを備えたトラクター=6月29日、千葉県君津市

 政府は、高速大容量規格「5G」の普及促進を目指し、通信網を整備する携帯電話事業者らに税を優遇する投資促進税制について、2021年度末までの期限を延長する方向で検討に入った。当初は2年間の時限措置として導入されたが、地方も含めた日本全国で5Gの活用環境を早期に整え、デジタル化を推進する必要があると判断した。

 経済産業省が8月にまとめる22年度税制改正要望に盛り込まれる方向で、同省は与党との調整に入った。延長幅は1、2年程度を軸とし、今後検討を本格化させる見通し。

 5Gはデジタルトランスフォーメーション(DX)を象徴する基幹技術の一つ。より大量のデータの送受信や、機械の遠隔操作を遅延なく行うことを可能にする。自動運転を実用化する際に不可欠な技術としても知られる。

 5G投資促進税制は20年度に創設。基地局などを整備する事業者は、設備投資の15%を法人税から控除するか、30%を経費に上乗せして課税所得を減らすかを選べる。デジタル技術を活用し、生産性を向上させる「スマート工場」や「スマート農業」など、地域限定で利用する「ローカル5G」を整備する事業者も対象に含まれる。

 ただ、現行の「15%」という控除率は「税の世界の常識としてはあり得ないくらい思い切った数字」(業界団体関係者)とされ、政府内で控除率の引き下げ論が出ることも予想される。これに対し、経産省は「5G整備は道半ばで、さらなる加速化が必要だ」との立場。与党内の一部にも手厚い税制支援の継続を求める声があり、控除率が維持できるかどうかが焦点の一つとなりそうだ。