アフガニスタン政権崩壊、タリバンが首都を制圧
ガニ大統領は国外に脱出、「新たな歴史上の試練に直面」
アフガニスタンの反政府勢力タリバンは15日、ガニ政権最後の拠点だった首都カブールを制圧した。ガニ大統領は国外に脱出し「タリバンが勝利した」と敗北を認めた。アフガン政府は崩壊した。
ロイター通信によると、タリバンの報道担当者は中東の衛星テレビ局アルジャジーラを通じ戦争終結を宣言し、「アフガン国内の全勢力との対話」や国際社会との平和的な関係構築を呼び掛けた。日本や欧米など各国は、現地の大使館職員や協力者らの国外退避を急いだ。
タリバン幹部はロイター通信の電話取材に、市民の日常生活再開に向け兵士に規律を守るよう指示していると説明する一方、今後の政権運営について述べるのは時期尚早と指摘。全外国人の退去も求めた。カブール市内では16日、タリバン戦闘員が各家庭や事業所を回り、民間人が所有している武器類の回収を始めた。
2001年に米軍主導の攻撃でタリバン政権が崩壊し、民主的な政権が誕生してから約20年。イスラム根本主義を掲げ、国民を恐怖で支配したタリバンが再びアフガンを統治する。イスラム教の厳格な解釈で、女性の権利制限や公開処刑など人権侵害に当たる政策が再導入される懸念が強まっている。
タリバンは8月に入り、バイデン米政権が決定した8月末までの駐留米軍完全撤収に付け入る形で全国の主要都市を驚異的なスピードで制圧。米軍撤収完了前に権力を掌握する事態となった。
ガニ氏はフェイスブックで、流血回避のため出国したと説明。タリバンに「今や新たな歴史上の試練に直面している」と警告した。
カブール陥落を受け、カルザイ前大統領はアブドラ前行政長官ら有力政治家と評議会を結成すると表明。タリバン側と協議したい意向だ。
カブールの空港当局は16日、全ての国際商業便の運航を停止すると発表した。しかし、空港には国外脱出を求める市民らが押し寄せ、ボーディングブリッジ(搭乗橋)に外からよじ登って飛行機に乗ろうとする人も相次いだ。事態収拾のため、米軍が空に向けて発砲。ロイターによれば、混乱の中で少なくとも5人が死亡した。(ニューデリー時事)