カリブ系移民の逞しさと音楽「イン・ザ・ハイツ」
トニー賞4冠のミュージカルを映画、 躍動感あふれる楽曲
ニューヨークの片隅に取り残された街で、夢に踏み出そうとする若者たちと、人々の絆の物語。いつも陽気な音楽が流れる、実在する移民の街。この街で育ったウスナビ(アンソニー・ラモス)、バネッサ(メリッサ・バレラ)、ニーナ(レスリー・グレイス)、ベニー(コーリー・ホーキンズ)は、さまざまな障害にぶつかりながらも自分の夢の実現に向けその一歩を踏み出そうとしていた。そんな時、街の住人たちに住む場所を追われる危機が訪れる。
これまでもさまざまな困難に見舞われても立ち上がってきた彼らは今回も立ち上がるのだが。突如起きた大停電の夜、街の住人たちやウスナビたちにとって、運命の歯車が大きく動き出す。
現在公開中の映画「イン・ザ・ハイツ」は、トニー賞4冠(作品、楽曲、振付、編曲)に輝いたミュージカル作品を映画化したものだ。
その音楽性は、これまでのミュージカルをイメージする曲調とはいささか趣が異なる。同作品は、とにかくカリブ海のラテンの音楽にラップやR&Bなどをプラスしたものだ。キャラクターたちの気持ちをラップのリズムに乗せつつ、ラテン系音楽で統一されているため、ポップやロック系のミュージカルとは違い、南国まさにラテン音楽が持つ陽気さを前面に押し出した作品になっていて、まさに陽気なカリブ系移民たちの逞(たくま)しさを感じさせる。
ブロードウェイの名作として今も語り継がれ映画化もされた『ウエスト・サイド・ストーリー』や『サウンド・オブ・ミュージック』などは楽曲に優雅さがあった。一方、「イン・ザ・ハイツ」の楽曲は躍動感にあふれ、一気に駆け抜け、観(み)る者を熱くさせる。
監督は、映画『クレイジー・リッチ!』を手掛けたジョン・M・チュウ。
(佐野富成)