自治体、事前合宿で住民との接触回避に苦心
東京五輪1カ月前、「町のレガシー」に期待も厳しい状況
東京五輪まで23日で1カ月となり、事前合宿で来日する国・地域の選手団受け入れが各地のホストタウンなどで本格化する。新型コロナウイルスの影響で取りやめる動きも相次ぐ中、実施を決めた自治体は安全な滞在に神経を使い、住民との接触を避けつつ応援する方法に苦心している。
内閣官房によると、事前合宿などの中止を決めた自治体は、4日時点で122。その後も増えている。
大会延期後初めて事前合宿を受け入れた群馬県太田市には、1日からオーストラリアのソフトボール女子チームが滞在。選手を感染リスクにさらさないため、市は練習試合の一般公開を延期し、感染防止策を再度検討した。希望者を事前登録制に改め、開催にこぎ着け「ほっとしている」(担当者)。
選手らは練習以外にホテルを出ることはなく、買い物は市職員が代行。清水聖義市長は買い物について「問題ないのでは」と話すが、動線の確保や店員とのやりとりなど検討すべき点は多く、チームが選手村に向かう7月17日まで担当者の苦心は続きそうだ。
長野県下諏訪町は、アルゼンチンとイタリアのボートチームなどを7月に受け入れる。住民へのワクチン接種を急ぐ町では、選手団に対応できる職員は数人と少ないが、両国は同意した。
選手は専用車両で移動し、町民の練習会場敷地内への立ち入りを禁止。一方で練習の公開も計画する。町担当者はワクチンを打たない町民が選手を感染させるリスクを懸念。「近距離で接触しないことが一番の対策だ」と強調する。ポルトガル女子体操代表を受け入れる新潟県加茂市では、対応する市職員約10人がワクチン接種を受ける。
当初考えていた選手との直接交流はかなわず、太田市では選手の学校訪問などが白紙になった。オンライン交流を検討するが、清水市長は「ホストタウンの意義が半分なくなった気がする」と嘆く。
下諏訪町もオンライン交流や町民のメッセージを送ることなどを想定。町担当者は「『厳しい状況だったが、やれて良かった』と後で思えることができたら」と話し、異例の状況下で選手を受け入れた努力が町のレガシー(遺産)になることを期待する。