企業や大学によるワクチン職域接種が本格化へ


航空2社が先行、開始を前に準備加速、接種で安堵感を

企業や大学によるワクチン職域接種が本格化へ

新型コロナウイルスワクチンの接種を受ける日本航空の客室乗務員(左)=14日、東京都大田区の羽田空港(時事)

 新型コロナウイルスワクチンの普及加速に向け、企業や大学による職域接種が本格化する。全日本空輸と日本航空は他社に先駆け、14日までに国際線のパイロットや客室乗務員に対する接種を始めた。10万人を超える大規模接種を予定する企業もあり、21日以降の開始を前に準備を急ぐ。

 13日に接種を始めた全日空に続き、日航も14日に開始した。この日、羽田空港の会議室で接種した日航客室乗務員の野口朝加さん(29)は「感染対策を徹底していても不安があった。接種は安堵(あんど)感につながる」と話す。

 両社は国際線の乗務員から徐々に対象を広げ、全日空はグループで4万6500人、日航は3万6000人に接種する。当初は21日開始の予定だったが、準備が整ったため前倒しした。

 多くの企業は21日以降、職場での接種が本格化する。日本郵政は全国に9カ所程度の会場を設け、グループ全体で年内24万人の接種を計画する。販売店のスタッフを含め10万人規模を見込むソフトバンクグループとソフトバンクは11日に実際の接種会場で訓練を行い、手順を確認した。

 大企業を中心に準備が進む一方、課題となるのが中小企業へのワクチン普及だ。政府は1000人以上の企業から実施する方針を示している上、作業を行う医療従事者の確保も含め、中小企業単独ではハードルが高い。

 こうした中、貸し会議室大手のティーケーピー(TKP)は経済同友会と連携し、中小企業に合同接種の機会を提供する。TKPは「スタートアップ企業なども早く打てるようにしたい」と説明する。ぐるなびは、自社の従業員と家族に接種した上で、加盟飲食店にも広げる考えだ。

 森ビルはテナント企業や同社が管理・運営する住宅の居住者も対象とする。虎ノ門ヒルズ(東京都港区)などを会場に、合計で10万人規模を見込む。同社広報は「住民も含めた街全体の安全性を高めたい」と語った。