政府、アストラ製のワクチン124万回分を台湾へ


ワクチン外交を進める中国に対抗、リーダーシップを発揮

政府、アストラ製のワクチン124万回分を台湾へ

4日、日本からの緊急支援として台湾の桃園空港に到着した新型コロナワクチン(台湾の衛生福利部提供・時事)

 政府は、日本国内で製造された英アストラゼネカのワクチン124万回分を台湾に供与した。新型コロナウイルスの感染が急速に拡大し、ワクチンの確保が難航している台湾に対し、国際機関を経由させない迅速な対応となった。「ワクチン外交」を進める中国に対抗する狙いもある。

 茂木敏充外相は4日の記者会見で、「ワクチンの分野でも日本としてしっかりリーダーシップを発揮したい」と強調した。

 台湾はこれまで感染抑止に成功し、コロナ対策の「優等生」とされてきたが、5月に入って感染者数が急増。一方、ワクチン確保は進まず、台湾当局は「中国が調達の障害になっている」との見方を示していた。

 中国は自国製ワクチンを供給することで、途上国などへの影響力を強めており、台湾にも供与を持ち掛けた。これに対し、米政府は3日、国際共同調達制度「COVAX(コバックス)」を通じたワクチン供与を表明、台湾も対象に加えるとした。

 ワクチン外交で出遅れていた日本も、コバックスを通じた途上国援助に加え、「顔の見える支援」として、直接供与を模索。要請があった台湾に対し、「いま出せるものは全部出す」(外務省幹部)ことを決めた。台湾のワクチン生産体制が7月に整うことを念頭に、スピード感も重視。結果として、米国と同時期に「台湾支援」を打ち出す格好となった。

 中国は「政治的利益を図る手段」と反発を強めるが、外務省関係者は「緊急人道支援であって、ワクチンの政治利用という批判は当たらない」と反論する。

 今後は台湾に限らず、日本との関係を踏まえ、ワクチン外交を展開する方針だ。