普通選挙めぐり攻防激化/香港


金融街占拠へ抗議拡大 民主派/封殺へ署名活動着々と 親中派

 7月1日、中国返還17周年を迎えた香港では、記念式典や祝賀イベントが行われる一方、2017年から行われる行政長官選での普通選挙のあり方をめぐり民主派が大規模な抗議デモを展開した。8月末までに金融街のセントラル(中環)占拠による急進的な抗議に発展する可能性があり、緊迫している。

 同日、恒例の国旗掲揚式に初代行政長官の董建華氏、二代目の曾蔭権氏とそろい踏みした梁振英行政長官は、直後の記念式典で「香港経済は安定成長しており、いかなる成長を阻む影響も安定のために避けなければならない。2017年からの行政長官選に普通選挙を導入する問題では香港は多元社会なので違った意見があることは理解しており、引き続きコンセンサスを取るために最大の努力を続ける」と述べ、政府案に反対する意見があることを認めつつ、すり合わせをする努力を重ねることを強調した。

 香港では親中派団体が記念イベントを開き、民主派が計画するセントラル占拠に反対する署名活動を実施。「大学生の孫が参加すると息巻いていて就職に差し障るのではないかと夜も眠れない」と言いながら署名する高齢者たちの声は悲痛だ。

 セントラル占拠に反対する親中派組織「愛護香港力量」は6月29日にデモを行い、署名活動で3万人が署名。セントラル占拠に参加しようとする学生や若年層自身ではなく、その親を説得し、参加しないよう押さえ込んだ。

 台湾の学生が決起した立法院(国会)占拠と違い、違法性が問題視されて民意を得ていないことを見透かす親中派はセントラル占拠を封殺する連携工作を進め、香港の中国化は着実に浸透している。

 イベントに参加した親中派政党・民建連出身の曽鈺成立法会議長は「万一、セントラル占拠で立法会が影響を受けても、別の場所で開会する準備を進めている」と対策は万全との発言。

 次期行政長官選を真の普通選挙にすることを求めている民主派は恒例の大規模デモを行い、香港警察発表では出発時で9万2千人、最高時で9万8600人が参加。主催者(民間人権陣線)発表では51万人が参加した。

 デモ後も一部の学生団体が徹夜で約1200人がセントラル周辺で座り込みのデモを続け、警察当局は空前の511人を逮捕。4000人の警官を動員して排除・拘束するのは容易だった。

 セントラル占拠の違法行為で逮捕されれば、犯罪前歴がつき、就職を左右する。親中派団体の「愛港之声」、「香港青年関愛協会」、「齊心行動」、「愛護香港力量」や親中派政党は、参加しようとする若者自身ではなく、その親に焦点を絞って説得工作を展開。家族の悲痛な嘆きを利用してデモ参加辞退を誘導している。

 「われわれは今後、何もしない。警察の保安管理能力を信頼する」(「愛護香港力量」の李家家・召集人)と余裕さえ見せ、戦略的な封じ込め工作が奏功していることをうかがわせている。

 親中派は7月3日、セントラル占拠行動に反対する「保普選、反占中大連盟」を発足させ、署名活動を7月28日から21日間続ける計画。署名目標数は模擬住民投票を上回る80万人として着々と封じ込めを図る。

 一方、若年層の間に1989年に発生した天安門事件に対する関心が高まりをみせており、民主派にとって逆風ばかりではない。

 7月2日、尖沙咀(チムサーチョイ)にある支連会(香港市民支援愛国民主運動連合会=李卓人主席)が運営する天安門事件記念館は前日のデモの余韻が残っているかのように香港や中国、欧米の若者が団体で見学に訪れ、ごった返していた。

 事件で人民解放軍の銃撃を受けて死亡した中国人学生や若者たちの遺体画像を見せながら「中国共産党は事件を学生の動乱と断じて血の弾圧を行い、多くの無辜(むこ)の人民が犠牲となった。中国政府は事件の再評価を行うべきだ」と話す記念館スタッフに、香港や中国の若者たちは深くうなずいていた。

 民主派の最大野党・民主党は7月6日、セントラル占拠行動を支持し、8月までに実行することを表明。急進派に押される民主派内の穏健派は強い拒否反応を示しているが、民主派全体として足並みはそろいつつある。

 普通選挙をめぐる香港の親中派・親政府派と民主派の戦いは両者の後ろ盾である中国と英米のせめぎ合いを通して香港の「主流民意」をいかに勝ち取るかにかかっている。

(香港・深川耕治)

 7月1日、中国返還17周年を迎えた香港では、記念式典や祝賀イベントが行われる一方、2017年から行われる行政長官選での普通選挙のあり方をめぐり民主派が大規模な抗議デモを展開した。8月末までに金融街のセントラル(中環)占拠による急進的な抗議に発展する可能性があり、緊迫している。

 同日、恒例の国旗掲揚式に初代行政長官の董建華氏、二代目の曾蔭権氏とそろい踏みした梁振英行政長官は、直後の記念式典で「香港経済は安定成長しており、いかなる成長を阻む影響も安定のために避けなければならない。2017年からの行政長官選に普通選挙を導入する問題では香港は多元社会なので違った意見があることは理解しており、引き続きコンセンサスを取るために最大の努力を続ける」と述べ、政府案に反対する意見があることを認めつつ、すり合わせをする努力を重ねることを強調した。

 香港では親中派団体が記念イベントを開き、民主派が計画するセントラル占拠に反対する署名活動を実施。「大学生の孫が参加すると息巻いていて就職に差し障るのではないかと夜も眠れない」と言いながら署名する高齢者たちの声は悲痛だ。

 セントラル占拠に反対する親中派組織「愛護香港力量」は6月29日にデモを行い、署名活動で3万人が署名。セントラル占拠に参加しようとする学生や若年層自身ではなく、その親を説得し、参加しないよう押さえ込んだ。

 台湾の学生が決起した立法院(国会)占拠と違い、違法性が問題視されて民意を得ていないことを見透かす親中派はセントラル占拠を封殺する連携工作を進め、香港の中国化は着実に浸透している。

 イベントに参加した親中派政党・民建連出身の曽鈺成立法会議長は「万一、セントラル占拠で立法会が影響を受けても、別の場所で開会する準備を進めている」と対策は万全との発言。

 次期行政長官選を真の普通選挙にすることを求めている民主派は恒例の大規模デモを行い、香港警察発表では出発時で9万2千人、最高時で9万8600人が参加。主催者(民間人権陣線)発表では51万人が参加した。

 デモ後も一部の学生団体が徹夜で約1200人がセントラル周辺で座り込みのデモを続け、警察当局は空前の511人を逮捕。4000人の警官を動員して排除・拘束するのは容易だった。

 セントラル占拠の違法行為で逮捕されれば、犯罪前歴がつき、就職を左右する。親中派団体の「愛港之声」、「香港青年関愛協会」、「齊心行動」、「愛護香港力量」や親中派政党は、参加しようとする若者自身ではなく、その親に焦点を絞って説得工作を展開。家族の悲痛な嘆きを利用してデモ参加辞退を誘導している。

 「われわれは今後、何もしない。警察の保安管理能力を信頼する」(「愛護香港力量」の李家家・召集人)と余裕さえ見せ、戦略的な封じ込め工作が奏功していることをうかがわせている。

 親中派は7月3日、セントラル占拠行動に反対する「保普選、反占中大連盟」を発足させ、署名活動を7月28日から21日間続ける計画。署名目標数は模擬住民投票を上回る80万人として着々と封じ込めを図る。

 一方、若年層の間に1989年に発生した天安門事件に対する関心が高まりをみせており、民主派にとって逆風ばかりではない。

 7月2日、尖沙咀(チムサーチョイ)にある支連会(香港市民支援愛国民主運動連合会=李卓人主席)が運営する天安門事件記念館は前日のデモの余韻が残っているかのように香港や中国、欧米の若者が団体で見学に訪れ、ごった返していた。

 事件で人民解放軍の銃撃を受けて死亡した中国人学生や若者たちの遺体画像を見せながら「中国共産党は事件を学生の動乱と断じて血の弾圧を行い、多くの無辜(むこ)の人民が犠牲となった。中国政府は事件の再評価を行うべきだ」と話す記念館スタッフに、香港や中国の若者たちは深くうなずいていた。

 民主派の最大野党・民主党は7月6日、セントラル占拠行動を支持し、8月までに実行することを表明。急進派に押される民主派内の穏健派は強い拒否反応を示しているが、民主派全体として足並みはそろいつつある。

 普通選挙をめぐる香港の親中派・親政府派と民主派の戦いは両者の後ろ盾である中国と英米のせめぎ合いを通して香港の「主流民意」をいかに勝ち取るかにかかっている。

(香港・深川耕治)

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