立憲民主党/護憲にとどまる限り政権は遠い
《 記 者 の 視 点 》
先の参院選で立憲民主党は改選9議席を倍増近い17議席に増やした。国民民主党が6議席にとどまり、これまで拮抗していた参院の議席でも立憲が野党第1党の立場を固めた。枝野幸男代表は、野党第1党として「従来よりしっかりと説明責任を果たさせる」と述べ、「(野党共闘の)連携をさらに強化して次の総選挙で政権選択を迫れる状況をつくっていきたい」と意気軒昂(けんこう)に語ったが、喜んでばかりはいられない事情が山積している。
時事通信の出口調査によると、支持政党のない、いわゆる無党派層の比例代表での投票先は自民党25・5%に次ぐ21・0%だったが、自民を抑えてトップだった結党直後の17年衆院選から7・0ポイントも減少した。もっと深刻なのは年代別の得票率だ。自民は20代、公明は10代が最も高く若年層の保守志向が改めて裏付けられたが、その半面、立憲は40代までの得票率が全世代の平均値を下回り、70代以上の得票率が最高だったという。これは共産党も同様の傾向を示し、50代まで得票率が平均値を下回り、70代以上が最高だった。
これは立憲(共産も)人気が70代以上、つまり「団塊の世代」以上の高齢者に支えられており、このままでは将来の党勢は先細りするしかないことを示している。この両党が主導する野党共闘が「次の総選挙で政権選択を迫れる状況」をつくり出せるのか、はなはだ疑問だ。
立憲が掲げた政策は年金、消費税と社会保障、経済格差の解消など生活に直結する問題でも、国家の存立自体に関わる外交安保でも、そして憲法論議でも、与党の現実に裏打ちされた政策を凌駕(りょうが)できていない。それだけにとどまらず、かつての社会党を連想させる「何でも反対」で改憲阻止を至上命題とする「護憲政党」に限りなく近づいている。進歩性、革新性が感じられないのだ。
外交安保をみると、「日米安保体制を基軸とする」と言いながら、綱領に安保条約廃棄を明記する共産党と選挙で共闘。米国が湾岸戦争以来求める人的貢献の拡大、同盟の双務性向上に対し、ぎりぎりの線で憲法との両立を目指した安保法制を「立憲主義に逸脱する」との一点で廃止を主張。また、沖縄の「民意」に便乗して、民主党政権でさんざん検討した揚げ句に出した、米軍普天間基地の移転先は「辺野古以外にない」との結論をあっさり捨て去った。政権に就いてこんな公約を実行すれば、日米関係がどうなるかは自明だろう。
かつて進歩・革新を自任した共産主義勢力は、民主憲法(憲法9条)擁護をその運動の中核に据えた。共産主義の虚構が明らかになった現在、彼らは進歩でも革新でもないが、隣国の中国が軍拡を進め、北朝鮮が核ミサイル開発に執念を燃やす中でも、未(いま)だに「憲法9条があるから日本は戦後平和だった」として「9条」死守を公言する国会議員までいる。立憲が立憲主義にとらわれ過ぎて、実質的に護憲勢力にとどまっている限り、政権への道ははるかに遠いと言えよう。
政治部長 武田 滋樹