コロナ下の五輪開会式、残念だった経済界の欠席

《 記 者 の 視 点 》

 東京五輪が開幕して10日。日本人選手の連日の活躍もあり、序盤の五輪は開催前の不安やトラブルを吹き飛ばすかのように、大きな盛り上がりを見せている。

 息詰まる熱戦が繰り広げられ、勝者・敗者悲喜こもごも、それぞれにドラマチックなストーリーが展開され、見る者を感動させ、夢と希望そして勇気を与えてくれている。まさに「スポーツの力」である。

 参加した選手のコメントではないが、「五輪が開催されて本当に良かった」と、心からそう思う。

 それにしても、残念だったのは首都圏の開催試合が無観客となったことである。家でもこうした感動は味わえないわけではないが、現場で得られる臨場感とは比較にならないだろう。

 新型コロナウイルスの感染対策上やむを得ないにしても、他のプロ野球やJリーグ・サッカーなどの試合が、人数の制限はあるものの観客を入れて開催されるのに、なぜ五輪はダメなのか、今なお、疑問に思う人は少なくないのではないか。

 開会式会場の国立競技場で観客を1万人に制限し、マスク着用や席を空けての「3密」回避策などを取った場合、かなりの感染対策効果が得られることを、スーパーコンピューター「富岳」がシミュレーションで明らかにしているのに、こうした科学的な知見はなぜか生かされなかった。

 他の屋外会場でも、こうした感染対策が取られれば有観客で開催できた可能性が高いわけで、例えば、福島県の野外会場で行われたソフトボールの試合などは生で観戦できたに違いない。

 もう一つ残念だったのは、首都圏の競技会場が無観客開催と決まり、国立競技場の開会式も同様に無観客実施となって参加する関係者は950人程度に絞られたが、経団連など財界トップやスポンサー企業のトップなどの欠席が相次いだことだ。

 東京五輪・パラリンピックの最高位スポンサーを務めるトヨタ自動車が19日に、豊田章男社長の出席見送りを明らかにすると、NTTやNEC、富士通も社長ら幹部の出席を控えるとし、翌20日にはトヨタと同じく最高位スポンサーのパナソニックも楠見雄規社長の出席見送りを明らかにした。

 同じ20日には経団連の十倉雅和会長が会見で欠席を明らかにし、経済同友会の桜田謙悟代表幹事、日本商工会議所の三村明夫会頭も欠席となった。

 欠席の理由について、十倉氏はコロナ感染拡大に伴う緊急事態宣言の発令や五輪開催をめぐる混乱などを「総合的に勘案」した結果とし、「出席しないことでオリンピックの意義や価値が変わるものでは全くない。成功を心から願っている」と強調した。

 開会式から10日たち、五輪の興奮と感動が伝わる中、今でも、そうした考えに変わりはないのだろうか。開催前の、開催に慎重な世論という移ろいやすい“空気”に流されていなかったか。

 スポンサー企業にとっては、競技会場の多くで無観客となり、想定した経済効果・見返りが望めないことが欠席の一因にあるとしたら、感染対策という理由は分かるが、日本人として極めて残念に思う。

 経済部長 床井 明男